サイハイラン [ランの仲間]
アリドオシ
千両万両,有り通し
日本では新年を迎えるにあたって縁起物の赤い実を飾り,幸多きことを願ってきた。調べると冒頭のような語呂合わせがあることを知った。センリョウやマンリョウはよく知られているが,アリドオシが一両であることはあまり知られていない。さらに百両はカラタチバナ,十両はヤブコウジとなる。
昨秋,低山の登山口に樹形の整ったアリドオシ(直立の主茎,二叉分枝で水平方向への側枝)を見つけ,今年の花期を待った。5月中旬に訪れたがまだ蕾の状態,後日出直した。
図鑑などでは花数の少ない写真を見るが,この個体は一両の名を払拭するような花数である。写真Dのような一対の花が一般的と思われる。赤い実がまだ残り縁起の良さを感じた。果実の先には萼の明瞭な痕跡(写真E)があった。
※ 写真は上から順にA~E
日本では新年を迎えるにあたって縁起物の赤い実を飾り,幸多きことを願ってきた。調べると冒頭のような語呂合わせがあることを知った。センリョウやマンリョウはよく知られているが,アリドオシが一両であることはあまり知られていない。さらに百両はカラタチバナ,十両はヤブコウジとなる。
昨秋,低山の登山口に樹形の整ったアリドオシ(直立の主茎,二叉分枝で水平方向への側枝)を見つけ,今年の花期を待った。5月中旬に訪れたがまだ蕾の状態,後日出直した。
図鑑などでは花数の少ない写真を見るが,この個体は一両の名を払拭するような花数である。写真Dのような一対の花が一般的と思われる。赤い実がまだ残り縁起の良さを感じた。果実の先には萼の明瞭な痕跡(写真E)があった。
※ 写真は上から順にA~E
ヒメスミレサイシン [スミレの仲間]
エゾノタチツボスミレ [スミレの仲間]
背の高い白いスミレに惑わされて
沢沿いに走る砂利道脇に一際背の高いスミレを見つけた。一瞬,タデスミレかと見間違えるほどだ。絶滅危惧ⅠB類のスミレが易易と道沿いにあるはずがない。近寄ると葉も花も全く異なり,別のスミレだった。
「草丈に比べて花は小さく,遠くから見るとあまり見ばえがしない」(日本のスミレ,いがりまさし著)
白花はシロバナエゾノタチツボスミレ f. alba とよばれている。
沢沿いに走る砂利道脇に一際背の高いスミレを見つけた。一瞬,タデスミレかと見間違えるほどだ。絶滅危惧ⅠB類のスミレが易易と道沿いにあるはずがない。近寄ると葉も花も全く異なり,別のスミレだった。
「草丈に比べて花は小さく,遠くから見るとあまり見ばえがしない」(日本のスミレ,いがりまさし著)
白花はシロバナエゾノタチツボスミレ f. alba とよばれている。
ルリソウ
越後瑠璃との比較
エチゴルリソウの母種であることから両種を比較したいと考えていた。積雪量は別として生育する環境は類似(やや湿った落葉樹林下,日当たりの良い斜面など)している。しかし,図鑑の検索に示されているように分果(4つに分かれた果実)にならなければ正確な同定はできない。分果を比較するという新たな課題が生まれた。
エチゴルリソウの母種であることから両種を比較したいと考えていた。積雪量は別として生育する環境は類似(やや湿った落葉樹林下,日当たりの良い斜面など)している。しかし,図鑑の検索に示されているように分果(4つに分かれた果実)にならなければ正確な同定はできない。分果を比較するという新たな課題が生まれた。
ジャケツイバラ
今日も黄色
目立つ黄色に立ち止まり,またもやシャッターを切ってしまった。前回の2018-05-17は望遠レンズで写した。今回は涸れ沢の藪で撮影,前年の果皮(写真中)もまだ残っていた。絡みつかれた樹木を確認すると,5m以上も伸びたクワ(桑)であった。古民家の裏に生えているので,おそらく養蚕用のものと推察した。これだけ高くなったクワは使いものにならない。道路から見た古民家は無人になってから久しいようだ。
都心から直線で約60㎞の距離にこのような現実がある。日本では,こうした風景がますます増えていくことだろう。
※ 写真は上から上,中,下
目立つ黄色に立ち止まり,またもやシャッターを切ってしまった。前回の2018-05-17は望遠レンズで写した。今回は涸れ沢の藪で撮影,前年の果皮(写真中)もまだ残っていた。絡みつかれた樹木を確認すると,5m以上も伸びたクワ(桑)であった。古民家の裏に生えているので,おそらく養蚕用のものと推察した。これだけ高くなったクワは使いものにならない。道路から見た古民家は無人になってから久しいようだ。
都心から直線で約60㎞の距離にこのような現実がある。日本では,こうした風景がますます増えていくことだろう。
※ 写真は上から上,中,下
オヘビイチゴ
ヤブデマリ
ガクウツギ
ミツバウツギ
ヒメウツギ
ハルリンドウ [リンドウの仲間]
青紫色が眩しい
本種は日当たりのよい,やや湿り気のあるところに生育する。こうした環境はどこにもありそうだが,関東地方では開発の対象になりやすく,RDB指定状況が絶滅危惧や絶滅の都県もある。
この撮影地は緩やかな山頂部の草地にあるが,水が染み出るような所ではない。わずかな根雪が生育に十分な湿り気を確保していると思われる。数箇所で足の踏み場もないほどの群生を見ることができた。
北海道~本州(中部地方以北)の高山や亜高山帯の湿原には,植物体が小型で花はやや小さく,淡紫色から白色のタテヤマリンドウ var. minor がある。この変種はハルリンドウの1型とする説と別種とする説がある。
本種は日当たりのよい,やや湿り気のあるところに生育する。こうした環境はどこにもありそうだが,関東地方では開発の対象になりやすく,RDB指定状況が絶滅危惧や絶滅の都県もある。
この撮影地は緩やかな山頂部の草地にあるが,水が染み出るような所ではない。わずかな根雪が生育に十分な湿り気を確保していると思われる。数箇所で足の踏み場もないほどの群生を見ることができた。
北海道~本州(中部地方以北)の高山や亜高山帯の湿原には,植物体が小型で花はやや小さく,淡紫色から白色のタテヤマリンドウ var. minor がある。この変種はハルリンドウの1型とする説と別種とする説がある。
ユウシュンラン [ランの仲間]
キンラン属Cephalanthera 1種追加
ユウシュンランに関するある文献を参考に県内の石灰岩地を25年ぶりに訪れた。骨折した人に伴って,地形図を見ながらゆっくり下山したことがあるので,今でもこのルートは記憶している。当時の明るい樹林地にはスギが植林されて少し様子が変わっていた。希少種なのであまり期待していなかったが,登山道に沿って自生は3箇所,その内1箇所では数10個体を確認することができた。
落葉樹林の腐植土の厚い斜面に生育するとされているが,腐植土の厚い斜面に生育している個体(写真上・中)もあれば,腐植土が流出した登山道上に生える個体(写真下)もあった。写真上の中央左には露出した白粉のような菌糸がぼんやりと写っている。菌糸が発達するような環境に生える個体は大きく生育していた。これでキンラン属Cephalanthera 5種1品種(キンラン,ギンラン,ササバギンラン,クゲヌマラン,ユウシュンラン,ヤビツギンラン)を見ることができた。
種小名subaphylla は,接頭語sub-(=ほとんど)及び aphylla→aphyllus(=無葉の)と解釈することができる。
※ 写真は上から順に上,中,下
ユウシュンランに関するある文献を参考に県内の石灰岩地を25年ぶりに訪れた。骨折した人に伴って,地形図を見ながらゆっくり下山したことがあるので,今でもこのルートは記憶している。当時の明るい樹林地にはスギが植林されて少し様子が変わっていた。希少種なのであまり期待していなかったが,登山道に沿って自生は3箇所,その内1箇所では数10個体を確認することができた。
落葉樹林の腐植土の厚い斜面に生育するとされているが,腐植土の厚い斜面に生育している個体(写真上・中)もあれば,腐植土が流出した登山道上に生える個体(写真下)もあった。写真上の中央左には露出した白粉のような菌糸がぼんやりと写っている。菌糸が発達するような環境に生える個体は大きく生育していた。これでキンラン属Cephalanthera 5種1品種(キンラン,ギンラン,ササバギンラン,クゲヌマラン,ユウシュンラン,ヤビツギンラン)を見ることができた。
種小名subaphylla は,接頭語sub-(=ほとんど)及び aphylla→aphyllus(=無葉の)と解釈することができる。
※ 写真は上から順に上,中,下
ヤセウツボ [寄生植物]
トネハナヤスリ [シダの仲間]
丸形の鑢
本種も環境省のRDBカテゴリが絶滅危惧ⅠA類(CR)から絶滅危惧Ⅱ類(UV)に格下げとなった。一部の自生地で多くの個体増が確認にされたことに因ると思われる。
種小名は,本種の発見者であると同時に長年にわたって分類の困難なハナヤスリ属を生態的な面から解明しようとしてきた行方冨太郎氏への献名である(西田誠・栗田子郎,1969)。
栄養葉と胞子葉のからなる様子は,普通に見かける一般的なシダに比べるとやや異質な感じを受ける。胞子嚢に触れると白っぽい胞子が飛散した。生長したヨシに被われて目立たなくなり,6月になれば地上部は枯れてなくなる。和名は胞子囊をつけた胞子葉穂を鑢(やすり)に例えたと思われる。
本種も環境省のRDBカテゴリが絶滅危惧ⅠA類(CR)から絶滅危惧Ⅱ類(UV)に格下げとなった。一部の自生地で多くの個体増が確認にされたことに因ると思われる。
種小名は,本種の発見者であると同時に長年にわたって分類の困難なハナヤスリ属を生態的な面から解明しようとしてきた行方冨太郎氏への献名である(西田誠・栗田子郎,1969)。
栄養葉と胞子葉のからなる様子は,普通に見かける一般的なシダに比べるとやや異質な感じを受ける。胞子嚢に触れると白っぽい胞子が飛散した。生長したヨシに被われて目立たなくなり,6月になれば地上部は枯れてなくなる。和名は胞子囊をつけた胞子葉穂を鑢(やすり)に例えたと思われる。
トウサワトラノオ
カヤラン [ランの仲間]
湿気の高い谷間で
2017-05-06に続く掲載となる。前回は古刹の低木に着生していたものだが,今回は沢沿いの大径木のものを写した。湿度が高く樹皮はコケで被われ,生育環境が適しているのか年々個体数は増加傾向だ。このほかにも着生している樹幹を数箇所で見かけた。
2017-05-06に続く掲載となる。前回は古刹の低木に着生していたものだが,今回は沢沿いの大径木のものを写した。湿度が高く樹皮はコケで被われ,生育環境が適しているのか年々個体数は増加傾向だ。このほかにも着生している樹幹を数箇所で見かけた。
ワチガイソウ
ヤマブキソウ
明るい樹林地に出現
すでに2017-05-09で掲載しているが,秩父地方の幹線道路脇に大群落が出現したので改めて取り上げた。
ここは竹などが密生した藪で,降雪時には雪で曲がった竹が道路を塞ぐような場所だった。2,3年前,大径木を除いて林床がきれいに除伐された。道路脇なのでクサノオウかと疑った。何らかの整備補助制度が適応されてこのような環境が生まれたと思われる。広角レンズでも全体を捉えることができないほどの広さで,3方向のアングルで撮影した。
すでに2017-05-09で掲載しているが,秩父地方の幹線道路脇に大群落が出現したので改めて取り上げた。
ここは竹などが密生した藪で,降雪時には雪で曲がった竹が道路を塞ぐような場所だった。2,3年前,大径木を除いて林床がきれいに除伐された。道路脇なのでクサノオウかと疑った。何らかの整備補助制度が適応されてこのような環境が生まれたと思われる。広角レンズでも全体を捉えることができないほどの広さで,3方向のアングルで撮影した。
ユキグニカンアオイ
ギフチョウのお導きに従う
訪れた地方にはコシノカンアオイが分布している。その分布域に接して,東側にはユキグニカンアオイとその変種アラカワカンアオイ(主に下越地方荒川流域)の分布が知られ,その境界は新発田・小出構造線といわれている。(前川由己,1988)
フォッサマグナの西端を糸魚川・静岡構造線とする説は多くの研究者が支持しているが,東端については確定していない。諸説ある中,新発田・小出構造線を東端とする考えがある。
この日,3年前に訪れたアワガタケスミレの自生地に立ち寄った。すでに見頃は過ぎていたが,1頭のギフチョウが歩く先を舞っていた。その後を追うとこの株に行き着いた。撮影後まもなく下山したが,妖精か,はたまた妖怪か,このギフチョウは見送りまでしてくれた。
ある程度の予備知識があったので,くびれのない萼筒が鐘形であること,雌蕊が萼筒から多少突出すること,を確認して撮影した。
訪れた地方にはコシノカンアオイが分布している。その分布域に接して,東側にはユキグニカンアオイとその変種アラカワカンアオイ(主に下越地方荒川流域)の分布が知られ,その境界は新発田・小出構造線といわれている。(前川由己,1988)
フォッサマグナの西端を糸魚川・静岡構造線とする説は多くの研究者が支持しているが,東端については確定していない。諸説ある中,新発田・小出構造線を東端とする考えがある。
この日,3年前に訪れたアワガタケスミレの自生地に立ち寄った。すでに見頃は過ぎていたが,1頭のギフチョウが歩く先を舞っていた。その後を追うとこの株に行き着いた。撮影後まもなく下山したが,妖精か,はたまた妖怪か,このギフチョウは見送りまでしてくれた。
ある程度の予備知識があったので,くびれのない萼筒が鐘形であること,雌蕊が萼筒から多少突出すること,を確認して撮影した。
ツボスミレ [スミレの仲間]
コシノチャルメルソウ
越中から越後にあり
今回訪れた雪国には本種とコチャルメルソウの2種が分布,といわれている。撮影した地域では両種が混生していなかったので容易に見つけられた。より大型で花序に着く花の数が20個前後(花の数は2-10個),下から順に上に咲いていく(ほぼ同時に咲く),ことでも見分けられる。
※ ( )内はコチャルメルソウ
今回訪れた雪国には本種とコチャルメルソウの2種が分布,といわれている。撮影した地域では両種が混生していなかったので容易に見つけられた。より大型で花序に着く花の数が20個前後(花の数は2-10個),下から順に上に咲いていく(ほぼ同時に咲く),ことでも見分けられる。
※ ( )内はコチャルメルソウ
ミヤマカタバミ
待ち時間は長い
沢沿いを歩いていると日の当たらない斜面の白い花に気づいた。しかし,ほとんどが閉じた状態の花ばかり。被写体を足元のホクリクネコノメソウに切り替えた。撮影後,谷間にも日が差し込み,花が少し開きはじめていると感じた。辺りをうろうろしながら時間を潰し,ようやく瑞々しい花を写した。
沢沿いを歩いていると日の当たらない斜面の白い花に気づいた。しかし,ほとんどが閉じた状態の花ばかり。被写体を足元のホクリクネコノメソウに切り替えた。撮影後,谷間にも日が差し込み,花が少し開きはじめていると感じた。辺りをうろうろしながら時間を潰し,ようやく瑞々しい花を写した。
オトメエンゴサク
エゾエンゴサクに似ているが・・・
本種をはじめて見たのは20年程前。当時はエゾエンゴサクと呼んでいた。近年の研究で本州に分布するものは別種として扱われるようになった。湿り気のある土壌に生育するが,積雪の多い地域では沢沿いの林縁だけでなく,乾きやすい公園の草地などでも見ることができる。写真上はカタクリの群生にミチノクエンゴサクとともに混生していたものを写した。
本種をはじめて見たのは20年程前。当時はエゾエンゴサクと呼んでいた。近年の研究で本州に分布するものは別種として扱われるようになった。湿り気のある土壌に生育するが,積雪の多い地域では沢沿いの林縁だけでなく,乾きやすい公園の草地などでも見ることができる。写真上はカタクリの群生にミチノクエンゴサクとともに混生していたものを写した。
ミチノクエンゴサク
陸奥というよりも日本海要素
地元で見慣れたヤマエンゴサクと比べて小型で細長い印象を受ける。ヒメヤマエンゴサクという別名や種小名に capillipes(= 柄が毛のように細い)が用いられるのもうなづける。畦,草原,林縁など雪国の里では普通に見られた。
地元で見慣れたヤマエンゴサクと比べて小型で細長い印象を受ける。ヒメヤマエンゴサクという別名や種小名に capillipes(= 柄が毛のように細い)が用いられるのもうなづける。畦,草原,林縁など雪国の里では普通に見られた。