SSブログ

ヒメマツカサススキ

休耕田に生える稀少種
 開発によって消滅した湿地に代わり,休耕田は湿地を好む植物の残された環境である。ヨシなどが繁茂して遠目には荒れているが,藪をかき分けると貴重な植物が見られた。林縁に接しているので放置が続けば植物群集の遷移がさらに進むと思われる。
himematsukasasusuki.jpghimematsukasasusuki2.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

オシャグジデンダ [シダの仲間]

予期せぬ群生
 多くのフレッシュな個体が岩壁に着生していた。前回の2022-04-18で本種を掲載した際に「深山に産す」としたが,今回はこの表記を変えなければならないような環境に生育していた。道脇から5分ほど歩いたところで素晴らしい群落が見られるとは思いもよらなかった。
oshagujidenda3.jpgoshagujidenda4.jpgoshagujidenda5.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

シモツケヌリトラノオ [シダの仲間]

無性芽をつけないヌリトラノオ
 層状の地層が浸食を受け,オーバーハングした岩壁にヌリトラノオが着生していた。南東向きで日当たりの良い岩壁はかなり乾いていた。この岩壁には他の植物は見られなかった。
shimotsukenuritoranoo.jpgshimotsukenuritoranoo2.jpgshimotsukenuritoranoo3.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

ツクバトリカブト

猛毒の植物に触れる
 トリカブトの仲間を注意深く見ていくと少しずつ面白さが出てくる。ノギクなど観察しながら山麓の砂利道を進むと,終盤を迎えたトリカブトを所々で目にした。花柄,葉や葉柄の毛の状態を確認し,ヤマトリカブトよりも分布が広いとされるツクバトリカブトとした。
 キンポウゲ科の多くは萼が花の大部分を占めて意識しないと花弁に気づかない。トリカブトでは上萼片内部に1対の花弁が隠れている。残り花の上萼片を開く(写真C)と面白い形の花弁が現れた。この部分も分類上重要であることを改めて知ることができた。
 ※ 写真は上から順にA~D
tsukubatorikabuto.jpgtsukubatorikabuto2.jpgtsukubatorikabuto4.jpgtsukubatorikabuto3.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

シロバナアブラギク [キクの仲間]

初冠雪
 昨日(10月25日)は曇天にも関わらず奥秩父の山並みを見渡せた。山では前日の冷たい雨が雪となり,薄っすら雪化粧した。この時期の奥秩父山系での冠雪は記憶に残るが,標高1500m位の山では記憶にない。10日前は夏日となったが,紅葉を通り越して一挙に冬到来を思わせる。今日の掲載種はあまり見栄えのしない写真であるが,なかなか見られない花なので取り上げた。

 キクタニギク C. seticuspe f. boreale と リュウノウギク C. makinoi の自然交雑種で,花の径は母種に比べてひとまわり小さい。過去にもナカガワノギク × シマカンギク(=ワジキギク),シオギク × ノジギクなどの自然交雑種を取り上げたが,母種の形態が様々な形で見られる。また,花が小形化するなど母種に比べて見劣りする傾向がある。

shirobanaaburagiku.jpgshirobanaaburagiku2.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

ベンケイソウ

ムラサキベンケイソウ属(その3)
 チチブベンケイ,チチッパベンケイで大満足のこの日,さらに幸運が続いた。ゆとり時間があったので,9月に見頃を迎えるベンケイソウの自生地に立ち寄った。予想通りほとんどが花を終えていたが,少し奥まったところに花を着けた個体が見つかりビックリ。葉柄がないのでムラサキベンケイソウと思って小躍りしたが,よく見ると葉柄がある(写真中)。図鑑には「野生のものはしばしば誤ってムラサキベンケイソウと同定」という記載がある。
 それにしてもムラサキベンケイソウ属3種を一挙に見ることができ,あまりの幸運続きで少々恐ろしさを感じた。喜び勇んで調子に乗りすぎると足をすくわれる。帰宅するまで慎重を期した。
 ※ 写真は上から順に上,中,下 

benkeisou.jpgbenkeisou2.jpgbenkeisou3.jpg

続きを読む


nice!(1)  コメント(0) 

チチッパベンケイ

ムラサキベンケイソウ属(その2)
 チチブベンケイ(ショウドシマベンケイ)に花期を合わせたので,本種の花に出会えるとは思っていなかった。主要地方道を走行中,花を着けたベンケイソウを道路沿いの崖に発見,民家の入口に位置することから住人の方に許可を得て撮影した。標高があまり高くないことが幸いし,ベストの状態を撮影することができた。手の届く位置に自生しているので葉の裏もじっくり観察することができた。予期せぬ幸運に感謝
chichippabenkei.jpgchichippabenkei2.jpgchichippabenkei3.jpgchichippabenkei4.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

チチブベンケイ

「秩父」を冠した和名にこだわる  ムラサキベンケイソウ属(その1)
 本種は図鑑には掲載されていないが,長野県植物誌(1997)や秩父多摩甲斐国立公園指定植物種の改訂(2021)では,学名Sedum shimizuanum として掲載されている。
 チチブリンドウを発見した清水大典氏が(秩父市出身,菌類研究者,冬虫夏草研究の第一人者)が奥秩父山系で採集(1950)し,後に東京大学教授・本田正次博士によって新種として発表(1952),論文では次のように記載(一部抜粋)されている。

 清水大典氏が昭和25年8月,奥秩父で採集されたベンケイソウの一種は,ミツバベンケイソウに比べて,株立ちとなり,花が正開せず,秋になると上部の葉腋に無数の肉芽を生する特性があるので,これも新種として発表する。(以下 略)

 拙ブログでは「BG Plants 和名ー学名インデックス」(YList)を参考にしているがここにも掲載されていない。同じような形質があることからショウドシマベンケイ Hylotelephium venticillatum (L.) H.Ohba var. lithophilos H.Ohba とする考え方がある。「ベンケイソウ属の2新分類群」(大場秀章.1991)がその根拠と思われる。この論文には次のような記述(一部抜粋)がある。

 本田正次教授が記載したチチブベンケイ Sedum shimizuanum は,小豆島の型に近似するが,ミツバベンケイソウの別の型であると考えられる。 (略) 学名には好岩性を意味する名前を与えたが,和名にはショウドシマベンケイソウを提案したい。 (以下 略)

 清水大典氏の業績は秩父にとってこの上ない誇りである。素人の分際で拙ブログであれこれ書くのは研究者の方に失礼。勝手ながら,標準学名ではなくsynonymでの掲載をお許しいただきたい。
chichibubenkei.jpgchichibubenkei2.jpgchichibubenkei3.jpg

続きを読む


nice!(1)  コメント(0) 

ネナシカズラ [寄生植物]

帰化ではなく在来種
 日本に分布するネナシカズラ属 Cuscuta は帰化を含めて9種,といわれている。その多くは花柱が2個あるが,本種の花柱は1個(写真B)である。
 要注意外来生物指定のアメリカネナシカズラと在来種のマメダオシや本種との違いは見分け難いが,在来種2種は垂直方向に絡まる傾向がある。一方,
アメリカネナシカズラは覆いつくすように水平方向に広がる傾向がある,と感じた。
 本種が寄生できる植物(宿主)はどんなものがあるのか興味深い。いくつかの研究を見ると,多くの植物に寄生して宿主特殊性は低いようだ。遺伝子解析が進み,宿主への侵入システムが次第に明らかになっている。
 ※ 写真は上から順にA~D
nenashikazura.jpgnenashikazura2.jpgnenashikazura3.jpgnenashikazura4.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

ヤマトリカブト

変異に富む
 ヤマトリカブトの和名はよく知られているが,分布域は狭い(改訂新版・日本の野生植物2,2016),とされている。自宅から徒歩数10分の林縁(標高約250m)に数株のトリカブトが毎年咲く。分類が面倒な植物を少しでも理解すべきと思い,じっくり観察した。
 屈毛の生える花柄(写真C),葉及び葉柄は無毛(写真D),疎らな毛のある雄蕊(写真E),などを確認して同定した。
 ※ 写真は上から順にA~E
yamatorikabuto.jpgyamatorikabuto2.jpgyamatorikabuto3.jpgyamatorikabuto4.jpgyamatorikabuto5.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

ヒメミズワラビ [シダの仲間]

田んぼの水草
 稲刈りの終わった田んぼにシカの角のような葉が点在していた。シダ植物の一種と連想したが,あまり見かけない不思議な様子に惹かれた。写っている葉のほとんどは胞子葉で,栄養葉は写真下の左下でその一部が確認できる。
 従来日本産のミズワラビとされていたものは,2010年以降2つに分けられ,ミズワラビは沖縄以南に限られ,鹿児島県以北のものはヒメミズワラビと称するようになった。
himemizuwarabi.jpghimemizuwarabi2.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

フタバムグラ

アカネ科の小花
 小さく目立たない植物である。湿った畦道などに普通に生える1年草と感じていたが,あまり見かけなくなった。周辺に小さな沼が点在し,水田が広がる畦道に生育していた。過度な除草や使用する農薬も少ない地域と感じた。水路には終わりかけの花を着けたミズオオバコも確認した。
futabamugura.jpgfutabamugura2.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

コキクモ

水辺の珍種
 茎や萼に軟毛が密生するキクモにとても良く似ている。よく見ると本種には腺点はあるが茎や萼に毛は生えていない。花柄があることが特徴といわれる。花期の花柄は目立たないが,花が終わり果実になると柄は伸長して明瞭となる。水が抜かれ,稲刈りが終えた田んぼ脇に生えていた。
kokikumo.jpgkokikumo2.jpgkokikumo3.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

アキザキヤツシロラン [ランの仲間]

初見の菌従属栄養植物(クロヤツシロランと比べる)
 1998年版埼玉県植物誌には県東部での自生が報告されていたが,現在では自生していない,と聞いた。環境省RDBでは特に指定されていないが,埼玉県では絶滅危惧ⅠB類(EN)となっている。
 埼玉県から次のような報告もある。

 (略)主な生育地は竹林であるが,生育に適する竹林は減少傾向にあるので,今後発見される可能性は少ない。二次メッシュによる分布は総計で1区画のみの記録である。 (以下略) (埼玉県環境部自然環境課,2012.埼玉県の希少野生生物 埼玉県レッドデータブック2011 植物編,210p)

 私見であるが,この自生地の生育環境に似た竹林が埼玉県内には残っており,減少傾向にあるとは思えない。可能性のある竹林の立入許可を得て,組織的及び総合的な調査が必要と考える。他の自治体に比べて本県の劣るところである。 
akizakiyatsushiroran.jpgakizakiyatsushiroran2.jpgakizakiyatsushiroran3.jpgakizakiyatsushiroran4.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

ウスゲタマブキ [キクの仲間]

葉裏にクモ毛
 ウスゲタマブキは変種のタマブキ var. bulbiferus と分布を分ける,といわれている。一方で,埼玉県北西部では両種が分布,という報告もある。(1998年版 埼玉県植物誌)
 両種の違いである「葉裏のクモ毛の濃淡」を確認した。クモ毛は薄っすらと生えている(写真下)が,タマブキのような密生する状態ではなかった。
 ※ 写真は上から順に上,中,下
usugetamabuki.jpgusugetamabuki2.jpgusugetamabuki3.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 

クロヤツシロラン [ランの仲間]

有毛の唇弁
 種小名 pubilabiata には「毛のある唇弁」という意があるようだ。まだ見ぬアキザキヤツシロランの唇弁には毛がないという。今年はこの違いを意識して撮影した。
 自宅近くにある自生地の開花は,例年彼岸明けの頃だったが今年は少し早い。
kuroyatsushiroran2022_1.jpgkuroyatsushiroran2022_2.jpg

続きを読む


nice!(0)  コメント(0)