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チチブベンケイ

「秩父」を冠した和名にこだわる  ムラサキベンケイソウ属(その1)
 本種は図鑑には掲載されていないが,長野県植物誌(1997)や秩父多摩甲斐国立公園指定植物種の改訂(2021)では,学名Sedum shimizuanum として掲載されている。
 チチブリンドウを発見した清水大典氏が(秩父市出身,菌類研究者,冬虫夏草研究の第一人者)が奥秩父山系で採集(1950)し,後に東京大学教授・本田正次博士によって新種として発表(1952),論文では次のように記載(一部抜粋)されている。

 清水大典氏が昭和25年8月,奥秩父で採集されたベンケイソウの一種は,ミツバベンケイソウに比べて,株立ちとなり,花が正開せず,秋になると上部の葉腋に無数の肉芽を生する特性があるので,これも新種として発表する。(以下 略)

 拙ブログでは「BG Plants 和名ー学名インデックス」(YList)を参考にしているがここにも掲載されていない。同じような形質があることからショウドシマベンケイ Hylotelephium venticillatum (L.) H.Ohba var. lithophilos H.Ohba とする考え方がある。「ベンケイソウ属の2新分類群」(大場秀章.1991)がその根拠と思われる。この論文には次のような記述(一部抜粋)がある。

 本田正次教授が記載したチチブベンケイ Sedum shimizuanum は,小豆島の型に近似するが,ミツバベンケイソウの別の型であると考えられる。 (略) 学名には好岩性を意味する名前を与えたが,和名にはショウドシマベンケイソウを提案したい。 (以下 略)

 清水大典氏の業績は秩父にとってこの上ない誇りである。素人の分際で拙ブログであれこれ書くのは研究者の方に失礼。勝手ながら,標準学名ではなくsynonymでの掲載をお許しいただきたい。
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チチブベンケイ(ベンケイソウ科)Sedum shimizuanum 秩父弁慶 別名 ショウドシマベンケイ
 秩父多摩甲斐国立公園~長野県東部に分布,山地帯~亜高山帯の岩場に生える多年草。岩上に根茎を這わせて,株立ちとなり高さ25-30㎝。葉は3輪生または4輪生となり,柄はほとんどない。葉は広披針形での縁に粗い
 本種の特徴であるが花序の周辺,葉腋,根茎に胎芽(むかご)を着ける。
 花期は10月。茎頂に複散房状に花序を着け,一部には胎芽を伴う。花は斜開する。(2022.10.13)
【参考文献等】
本田正次.日本の新植物.植物学雑誌.1952,65(769-770),p.168-171
大場秀章.ベンケイソウ属の2新分類群.植物研究雑誌.1991,66:p.63-69

秩父多摩甲斐国立公園指定植物種の改訂.環境省.2021


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