オオナンバンギセル [寄生植物]
ナンバンギセルと比較する
一般道沿いのススキ草原を歩きはじめて間もなく見つかった。ナンバンギセルの黄褐色の萼や花柄には紫色を帯びた条が入るが,本種にはそうした条はなく白っぽい。今年は開花が早まり痛んだものが多かった。
一般道沿いのススキ草原を歩きはじめて間もなく見つかった。ナンバンギセルの黄褐色の萼や花柄には紫色を帯びた条が入るが,本種にはそうした条はなく白っぽい。今年は開花が早まり痛んだものが多かった。
ヤマウツボ [寄生植物]
ホザキヤドリギ [寄生植物]
冬青空に映える
ホザキヤドリギの果実が目立つ季節となり,6月に見た宿主樹(シラカンバ,イロハモミジ)を再訪した。花期(写真DE)には宿主の葉に紛れて見分け難いが,落葉した木立ではレモンイエローの果実が映えていた。
常緑性で雌雄異株のヤドリギに対し,本種は落葉性で雌雄同株でヤドリギよりも先端の枝に寄生するという。APG分類体系では別科となる。両種が着生している宿主樹があるというが今回は見つけられなかった。
冬の空は水蒸気や塵も少ない紺碧色だ。花を写すには避けたくなる光条件だが,この果実の色には好条件となった。なお,一部の写真(DE)ではレタッチやトリミングをしているが,他の写真はいわゆる「撮って出し」に近い。
※ 写真は上から順にA~E
ホザキヤドリギの果実が目立つ季節となり,6月に見た宿主樹(シラカンバ,イロハモミジ)を再訪した。花期(写真DE)には宿主の葉に紛れて見分け難いが,落葉した木立ではレモンイエローの果実が映えていた。
常緑性で雌雄異株のヤドリギに対し,本種は落葉性で雌雄同株でヤドリギよりも先端の枝に寄生するという。APG分類体系では別科となる。両種が着生している宿主樹があるというが今回は見つけられなかった。
冬の空は水蒸気や塵も少ない紺碧色だ。花を写すには避けたくなる光条件だが,この果実の色には好条件となった。なお,一部の写真(DE)ではレタッチやトリミングをしているが,他の写真はいわゆる「撮って出し」に近い。
※ 写真は上から順にA~E
ネナシカズラ [寄生植物]
帰化ではなく在来種
日本に分布するネナシカズラ属 Cuscuta は帰化を含めて9種,といわれている。その多くは花柱が2個あるが,本種の花柱は1個(写真B)である。
要注意外来生物指定のアメリカネナシカズラと在来種のマメダオシや本種との違いは見分け難いが,在来種2種は垂直方向に絡まる傾向がある。一方,アメリカネナシカズラは覆いつくすように水平方向に広がる傾向がある,と感じた。
本種が寄生できる植物(宿主)はどんなものがあるのか興味深い。いくつかの研究を見ると,多くの植物に寄生して宿主特殊性は低いようだ。遺伝子解析が進み,宿主への侵入システムが次第に明らかになっている。
※ 写真は上から順にA~D
日本に分布するネナシカズラ属 Cuscuta は帰化を含めて9種,といわれている。その多くは花柱が2個あるが,本種の花柱は1個(写真B)である。
要注意外来生物指定のアメリカネナシカズラと在来種のマメダオシや本種との違いは見分け難いが,在来種2種は垂直方向に絡まる傾向がある。一方,アメリカネナシカズラは覆いつくすように水平方向に広がる傾向がある,と感じた。
本種が寄生できる植物(宿主)はどんなものがあるのか興味深い。いくつかの研究を見ると,多くの植物に寄生して宿主特殊性は低いようだ。遺伝子解析が進み,宿主への侵入システムが次第に明らかになっている。
※ 写真は上から順にA~D
マメダオシ [寄生植物]
同定に混乱が見られる種
本種に関する知識を持ち合わせていなければ間違いなくアメリカネナシカズラと同定していた。有り難いことに本種に関する貴重な文献を紹介していただいていた。この文献では以下のように衝撃的な記述があった。
(略) マメダオシとされた標本についての同定はかなり深刻であった。 (略) 全64件のマメダオシの標本データのうち,62点の標本について再同定を行った結果,20点(31.3%)がアメリカネナシカズラを誤認したものであった。その一方で,アメリカネナシカズラと同定されていた標本の中には,ごくわずかだがマメダオシおよびハマネナシカズラを誤認した例が見つかった。 (略) マメダオシの生育環境を「陽光草地,湖畔や河川草地,耕作地,ときに海岸」と修正するのが適当である。(藤井伸二,2018)
撮影地は藤井氏が指摘したとおりの生育環境であった。正確な同定には実体顕微鏡下での観察が不可欠といわれているが,文献等踏まえながら,重要な部分を意識して接写した。主な寄主植物はアカツメクサ,その他イネ科,タデ科などにも巻き付いていた。
本種に関する知識を持ち合わせていなければ間違いなくアメリカネナシカズラと同定していた。有り難いことに本種に関する貴重な文献を紹介していただいていた。この文献では以下のように衝撃的な記述があった。
(略) マメダオシとされた標本についての同定はかなり深刻であった。 (略) 全64件のマメダオシの標本データのうち,62点の標本について再同定を行った結果,20点(31.3%)がアメリカネナシカズラを誤認したものであった。その一方で,アメリカネナシカズラと同定されていた標本の中には,ごくわずかだがマメダオシおよびハマネナシカズラを誤認した例が見つかった。 (略) マメダオシの生育環境を「陽光草地,湖畔や河川草地,耕作地,ときに海岸」と修正するのが適当である。(藤井伸二,2018)
撮影地は藤井氏が指摘したとおりの生育環境であった。正確な同定には実体顕微鏡下での観察が不可欠といわれているが,文献等踏まえながら,重要な部分を意識して接写した。主な寄主植物はアカツメクサ,その他イネ科,タデ科などにも巻き付いていた。
ヤセウツボ [寄生植物]
アメリカネナシカズラ [寄生植物]
要注意外来生物指定
新型コロナウイルスのデルタ株には他の株に比べて段違いの感染力があるという。8月26日の朝刊記事では,このデルタ株を雑草の「ひっつき虫」に例えて報道している。
「ひっつき虫」を体験した者や植物の知識のある者には,これが刺の多いオナモミ(キク科)の果実であることは直ぐに思いつくであろう。ネット検索してみると学校現場などでは,この記事が既に引用されている。感覚的には分かりやすい「例え」であるが,個人的には違和感を感じた。科学分野である医学に携わる者であれば,科学的に論じるべきと思うからだ。
デルタ株に例えられたオナモミは,今や雑草という格付けではなく絶滅危惧種に指定されるほどの希少種だ。すでに東京都や近畿地方では絶滅種。種子には動脈硬化の予防となるリノール酸が多量に含まれ,漢方薬などでも使われる,という。拡大解釈によってオナモミが除去されないことを願う。
いつものことながら前書きが長くなってしまった。新聞記事を読んだ翌日,凄まじい植物に出会った。何度も見ているが,こちらの方が段違いに悪影響を与える植物である。国立環境研究所侵入生物データベースを参照すると`50年以上,動物の胃中でも生存´とある。真偽はやや疑いたくなるが,こちらの方が例えには相応しい。河川敷100m以上にわたって写真Aの状態が続く。
※ 写真は上から順にA~D
新型コロナウイルスのデルタ株には他の株に比べて段違いの感染力があるという。8月26日の朝刊記事では,このデルタ株を雑草の「ひっつき虫」に例えて報道している。
「ひっつき虫」を体験した者や植物の知識のある者には,これが刺の多いオナモミ(キク科)の果実であることは直ぐに思いつくであろう。ネット検索してみると学校現場などでは,この記事が既に引用されている。感覚的には分かりやすい「例え」であるが,個人的には違和感を感じた。科学分野である医学に携わる者であれば,科学的に論じるべきと思うからだ。
デルタ株に例えられたオナモミは,今や雑草という格付けではなく絶滅危惧種に指定されるほどの希少種だ。すでに東京都や近畿地方では絶滅種。種子には動脈硬化の予防となるリノール酸が多量に含まれ,漢方薬などでも使われる,という。拡大解釈によってオナモミが除去されないことを願う。
いつものことながら前書きが長くなってしまった。新聞記事を読んだ翌日,凄まじい植物に出会った。何度も見ているが,こちらの方が段違いに悪影響を与える植物である。国立環境研究所侵入生物データベースを参照すると`50年以上,動物の胃中でも生存´とある。真偽はやや疑いたくなるが,こちらの方が例えには相応しい。河川敷100m以上にわたって写真Aの状態が続く。
※ 写真は上から順にA~D
ミヤマツチトリモチ [寄生植物]
ツチトリモチ科3種め
はじめて見た時にはキノコの一種か,と思うほど異質な植物,さらに種子植物と聞いて驚いた。日本には雌株のみが確認され,単為生殖をおこなうと説明されて2度ビックリ。所持する図鑑にはかなりのスペースを割いて事細かく記述されている。
この日は3度目となる観察,改めて場所によって個体差が大きいことが分かった。撮影した個体(写真A,B)はウリハダカエデに自生していた。山中で出会った方は,オオウラジロノキにも寄生し,シカによる食害もある,と言った。食害については,裏付けとなる塊根(写真D)を6年前に写していた。図鑑には,渓流近くの斜面に発生するものが多い,とあるが,筆者がこれまで観察したのは,いずれも渓流から離れた山腹から尾根である。まだ分からないことが多いのかもしれない。
※ 写真は上から順にA~D
はじめて見た時にはキノコの一種か,と思うほど異質な植物,さらに種子植物と聞いて驚いた。日本には雌株のみが確認され,単為生殖をおこなうと説明されて2度ビックリ。所持する図鑑にはかなりのスペースを割いて事細かく記述されている。
この日は3度目となる観察,改めて場所によって個体差が大きいことが分かった。撮影した個体(写真A,B)はウリハダカエデに自生していた。山中で出会った方は,オオウラジロノキにも寄生し,シカによる食害もある,と言った。食害については,裏付けとなる塊根(写真D)を6年前に写していた。図鑑には,渓流近くの斜面に発生するものが多い,とあるが,筆者がこれまで観察したのは,いずれも渓流から離れた山腹から尾根である。まだ分からないことが多いのかもしれない。
※ 写真は上から順にA~D
ヤッコソウ [寄生植物]
キイレツチトリモチ [寄生植物]
ツチトリモチ [寄生植物]
葉緑素をもたない寄生植物
落葉広葉樹の広がる標高約1000mの山中で歪な形をした塊を見たことがある。栽培されているコンニャクイモが変形したようなもので,ミヤマツチトリモチの塊茎であると教えていただいた。ハイノキ属に寄生するツチトリモチの存在もこの時に知り,この奇妙な植物に興味を持っていた。
雌雄異株で雌株のみが知られ,信じ難いが単為生殖で種子はつくられるという。球形~長楕円体の肉穂状の花序表面にある無数の赤い粒は,花でも果実でもなく小棍体と呼んでいるようだ。花に相当するものは内部にある。ツチトリモチを踏みつけないように自生地を歩いていると,ちょうど頂部が欠損している株(写真下)を見つけた。帰宅後画像を拡大して確認すると,鮮紅色層と橙黄色層の境目付近に雌花があるようだ。雌花は1花序に数え切れないほどあることになる。
落葉広葉樹の広がる標高約1000mの山中で歪な形をした塊を見たことがある。栽培されているコンニャクイモが変形したようなもので,ミヤマツチトリモチの塊茎であると教えていただいた。ハイノキ属に寄生するツチトリモチの存在もこの時に知り,この奇妙な植物に興味を持っていた。
雌雄異株で雌株のみが知られ,信じ難いが単為生殖で種子はつくられるという。球形~長楕円体の肉穂状の花序表面にある無数の赤い粒は,花でも果実でもなく小棍体と呼んでいるようだ。花に相当するものは内部にある。ツチトリモチを踏みつけないように自生地を歩いていると,ちょうど頂部が欠損している株(写真下)を見つけた。帰宅後画像を拡大して確認すると,鮮紅色層と橙黄色層の境目付近に雌花があるようだ。雌花は1花序に数え切れないほどあることになる。