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トチナイソウ [サクラソウの仲間]

一際目立つ白さ
 拙ブログの「サクラソウの仲間」は主にサクラソウ属 Primula を扱っている。しかし,特に見たいものは他属であっても同科であれば「仲間」としている。個人の主観と身勝手な仲間分けなのでご了解いただきたい。トチナイソウ属Androsace の本品種はまさにこれに該当,10年来の念願をようやく叶えられた。この日は夏至,部分日食などと重なり,特別な日となった。
 地球全体では千島・樺太・アラスカ・カナダ北部・朝鮮北部・中国北部・シベリア・ヨーロッパ東部など,分布域は広い。日本では絶滅危惧ⅠB類に指定され,分布が限られる。草丈は5㎝に足らず,花径も1㎝未満という極小の花にもかかわらず,存在感は際立っている。
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ナンブイヌナズナ

超塩基性岩に生える固有種
 6月19日から県をまたいだ移動が全面的に解除された。緊急事態宣言(4月7日)以来,久しぶりに秩父盆地を脱出,天候の安定している北東北を訪れた。
 高山に生えるイヌナズナ属Draba では唯一黄花をつける。2020-3-21に掲載した低地に生える越年草・イヌナズナとは別系統といわれている。蛇紋岩の隙間に根を張り,見事な大株を形成していた。目の覚めるような黄色で,肉眼では蛍光色を思わせる色である。写真でその色を忠実に再現することは難しい。
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キイムヨウラン [ランの仲間]

ムヨウラン類3
 紫色のホクリクムヨウランで驚いたのも束の間,鮮やかな黄色の植物体にこの日2度目のビックリ。まれにしか見られないムヨウラン類の連続遭遇は,神憑り的でやや恐ろしさを感じたほどである。花はホクリクムヨウラン同様あまり開かない。この自生地の株は全て開かず,最後まで斜開することもなかった。暖温帯の常緑広葉樹林床下に生えるというが,当自生地は落葉広葉樹林下にある。本県ではエンシュウムヨウランが近年確認されているため,花色変異品キバナエンシュウムヨウランを疑ってみたが,参考文献等から本品種をキイムヨウランと仮同定した。ムヨウラン類1・2と同様,写真画像を送信して同定をお願いした。
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ホクリクムヨウラン [ランの仲間]

ムヨウラン類2
 ムヨウラン(前回ムヨウラン類1)を撮影後,林の奥に視線を向けると紫色の植物体が見えた。図鑑で見たことがあるだけで,縁遠いものと考えていた。探して見つけたものではなく,まさに遭遇である。こんな場所で見つかるとは,我ながら眼を疑った。
 本種の同定には時間を要した。淡紫色の色が印象的で,直観的に「ホクリク」と思った。しかし,黄褐色が普通のムヨウランには個体変異が大きいこと,そのムヨウランと混生していること,さらに混生している場合には中間的な個体があることなど,調べていくと迷路状態となる。副萼部の膨らみもエンシュウムヨウランにも思えるなど,紛らわしいこと甚だしい。さらに,ここでは全体が鮮やかな黄色の個体(次回ムヨウラン類3で掲載)もある。
 6月上旬は外出自粛ムードもあり,人との会話も遠慮気味。近くの博物館も長い閉館明けで多忙の様子。迷った挙句,国の研究機関にe-mailで問合せをさせていただいた。「一市民の失礼な問合せ」と一蹴されても可笑しくないが,密かに期待を寄せていた。約1週間後にそれが現実のものとなった。結果は私の仮同定のとおりで,ホクリクムヨウランとご指導をいただいた。
 ご多忙の折,ご指導いただきました先生には改めて感謝を申し上げます。
 ※写真は上からA,B,C,D
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ムヨウラン [ランの仲間]

ムヨウラン類1
 緊急事態解除宣言(5月25日)以降も,6月18日までは県をまたぐ移動自粛が求められていた。この間,過去の写真整理や自宅近くの丘陵をじっくり調べていた。その甲斐もあって驚くような成果が得られた。初回は一般的なムヨウラン類からスタート,全3回にわたりその成果を掲載する。

 本種をはじめて見たのは,昨年自宅に近い丘陵地である。菌従属栄養植物なので毎年同じようにはならないが,今年は1/5程度の出現で寂しい限り。植物には特定の環境を好むものがあり,同じような環境をたよりに探していくと別の自生地が見つかることがある。 そのような経験から,昨年の自生地から約1㎞離れた落葉広葉樹林に入った。昨年にも増して,大株のムヨウラン(写真上:高さ34㎝)やきれいに平開した花(写真中・下:高さ28㎝)を撮影することができた。
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ギンラン [ランの仲間]

ヤビツギンランとの比較
 距が明瞭なギンラン,開花して間もない新鮮な花である。この花の残像が消えないまま,ヤビツギンランと遭遇した。前回の5枚目の写真として扱うことも考えたが,あえて別枠とした。この個体との出会いがなければ,ヤビツギンランの発見もなかった。
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ヤビツギンラン [ランの仲間]

距のないギンラン
 緊急事態解除宣言後も特定警戒5都道県に居住するため,過疎地域住民でも6月19日までは自粛に徹すると決めている。花巡りは自ずと近くの丘陵に限られるが,今まで見落としていたものを発見する幸運に恵まれた。約3週間振りの投稿となるが,約1月前に出会った珍種を紹介したい。

 未だに盗掘が絶えないが,コロナ禍で人出が少ないことも影響して今年はギンランの個体数を数多く見かけた。5月上旬,近くの丘陵で数個体のギンランを見かけ,様子が異なることからじっくり観察した。距がないことから,一瞬クゲヌマランかとも思った。撮影したものを帰宅して図鑑で調べるとクゲヌマランの葉や距とは異なる。図鑑では「キンラン同様,稀に唇弁が花弁化した個体 var. oblanceolata N.Pearce & P.J.Cribb がある」と示されていた。
 花弁はほとんど開かないので,ピンセットで静かに開き,花弁化していること(写真D)が分かるように撮影した。その後,二人の方からヤビツギンランやツクバキンランの論文を提供していただき,本種の同定を確信した。
 唇弁が花弁化することをペロリア現象という。約40年振りに岩波の生物学辞典を引くと,次のように示されていた。 

正化(英 pelory,peloria) 語原はギリシア語でお化けの意。唇形花冠などのように相称面の少ない花が,相称面のより多い花(例えば放射相称花)に変化したとき,その花を指し,現象をペロリア化(pelorisation)という。<中略> 花の進化(相称面現象)の先祖帰りと解釈される。重力の影響を去れば生ずるもの(ヒガンバナ)や,栄養の過多によるものもあるが,多くは直接の要因は内部的のものらしく,株による固定的なもの(花弁5個同形となったホシザキユキノシタ),遺伝的のもの(グロキシニアの一変種)もある。100余属に例がある(藤田哲夫,1949)。
※写真は上から順にA~D(写真A,B:2020.5.12 写真C,D:2020.5.10)
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