タカクマヒキオコシ
類似種多し
本変種が紀伊半島南部那智滝周辺に分布していることを把握していた。予想していた場所を30分ほど歩き,シカも入り難い岩場中段にそれらしきものを見つけた。手にとって観察できないので望遠レンズで引き寄せた。貧弱な個体ばかりなので別のものとも思えたが,特徴である葉表面の疎らな毛,萼の上唇及び下唇の違いなどからタカクマヒキオコシと判断した。
ヤマハッカ属Isodon には似た種が多く,種間においてもそれぞれ自然雑種があるなど,同定には苦慮する仲間である。特に,イヌヤマハッカとミヤマヒキオコシの花の長さや葉形は様々で,多くの変種がある。ヒキオコシとヤマハッカを除くと,分布を地域によって分けているので,同定への手がかりとなる。
本変種が紀伊半島南部那智滝周辺に分布していることを把握していた。予想していた場所を30分ほど歩き,シカも入り難い岩場中段にそれらしきものを見つけた。手にとって観察できないので望遠レンズで引き寄せた。貧弱な個体ばかりなので別のものとも思えたが,特徴である葉表面の疎らな毛,萼の上唇及び下唇の違いなどからタカクマヒキオコシと判断した。
ヤマハッカ属Isodon には似た種が多く,種間においてもそれぞれ自然雑種があるなど,同定には苦慮する仲間である。特に,イヌヤマハッカとミヤマヒキオコシの花の長さや葉形は様々で,多くの変種がある。ヒキオコシとヤマハッカを除くと,分布を地域によって分けているので,同定への手がかりとなる。
ミカエリソウ
ナチシダ [シダの仲間]
アサマリンドウ [リンドウの仲間]
イワヒバ [シダの仲間]
クルマギク [キクの仲間]
キイジョウロウホトトギス
固有種を訪ねる
45年前,奈良から南紀へ旅をしたことがある。十津川村から瀞八丁,新宮から海岸線を南紀白浜までのコースと記憶している。特に,中央構造線の一部で谷深い広大な紀伊山地には,奥秩父を思わせる隘路が当時随所で見られた。その頃は,紀伊半島の地質により関心を持っていたが,これがこの植物を知るきっかけとなった。
自生地の環境は紀伊半島の湿り気の多い崖と聞いていた。崖の代表格が天然記念物「一枚岩」のようである。特異な岩壁の形成は,降水量の多さと地質がその要因といわれている。この地方には火山がないのに温泉があるのは,紀伊半島南部地下深くには未だ冷え切っていないマグマがあるというのだ。調べていくと「熊野カルデラ」という用語が頻繁に取り上げられている。そこでは約1500万~1400万年前に地球環境にも影響を及ぼすほどの大噴火があったという。膨大な噴出物が堆積したが,その多くは雨水によって浸食された。そして残ったものが「古座川弧状岩脈」と呼ばれている。落差日本一の那智滝は,浸食に強い熊野酸性火成岩類・流紋岩と比較的柔らかい熊野層群(堆積岩)の地層の境界に形成された滝である。(南紀熊野ジオパークHP参照)
45年前,奈良から南紀へ旅をしたことがある。十津川村から瀞八丁,新宮から海岸線を南紀白浜までのコースと記憶している。特に,中央構造線の一部で谷深い広大な紀伊山地には,奥秩父を思わせる隘路が当時随所で見られた。その頃は,紀伊半島の地質により関心を持っていたが,これがこの植物を知るきっかけとなった。
自生地の環境は紀伊半島の湿り気の多い崖と聞いていた。崖の代表格が天然記念物「一枚岩」のようである。特異な岩壁の形成は,降水量の多さと地質がその要因といわれている。この地方には火山がないのに温泉があるのは,紀伊半島南部地下深くには未だ冷え切っていないマグマがあるというのだ。調べていくと「熊野カルデラ」という用語が頻繁に取り上げられている。そこでは約1500万~1400万年前に地球環境にも影響を及ぼすほどの大噴火があったという。膨大な噴出物が堆積したが,その多くは雨水によって浸食された。そして残ったものが「古座川弧状岩脈」と呼ばれている。落差日本一の那智滝は,浸食に強い熊野酸性火成岩類・流紋岩と比較的柔らかい熊野層群(堆積岩)の地層の境界に形成された滝である。(南紀熊野ジオパークHP参照)
ジョウロウホトトギス類は湿り気の多い崖に生え、茎が下垂、黄色の花を下向きにつける。本種を含めて3種1変種があり,いずれも絶滅危惧に指定されている。キイジョウロウホトトギスは、この類の中では最も広範囲かつ多くの個体が自生し,大型で丈夫といわれている。上記岩脈以外の紀伊半島の岩壁にも分布していたが,自生地は激減した。園芸目的の採取,崖の崩落,崩落防止工事などが,その原因とされている。
紀伊半島南部では石垣などに移植されて保存に努めている地域もある。また,ジョウロウホトトギスとして園芸用に流通している多くは本種と思われる。いずれも,今年の気候の影響で花つきが悪いと聞いた。自然環境が保たれたこの自生地では,そのような状況とは全く無縁で見事な大群落を形成していた。花は想像以上に大きくて,まさに和名に相応しい花である。
紀伊半島南部では石垣などに移植されて保存に努めている地域もある。また,ジョウロウホトトギスとして園芸用に流通している多くは本種と思われる。いずれも,今年の気候の影響で花つきが悪いと聞いた。自然環境が保たれたこの自生地では,そのような状況とは全く無縁で見事な大群落を形成していた。花は想像以上に大きくて,まさに和名に相応しい花である。
アカネ
空き地の垣根に繁茂
前回2017-11-28では果期のものを取り上げた。目立たない花の時期を狙っていたところ,散歩途中の路傍に格好の被写体を見つけた。4輪生(正確には偽輪生)の葉と小さな花に着目して撮影した。繁茂した様子をいろいろなアングルで写してみたものの,気に入ったものが撮れなかった。
和名は人名に引用されるなど,良い響きを感じる言葉である。一方,実物の花はこのイメージとはかなり懸け離れている。草木染の原料としたのはアカネの根を乾燥させたもので,「赤い根」が由来ともいわれている。
前回2017-11-28では果期のものを取り上げた。目立たない花の時期を狙っていたところ,散歩途中の路傍に格好の被写体を見つけた。4輪生(正確には偽輪生)の葉と小さな花に着目して撮影した。繁茂した様子をいろいろなアングルで写してみたものの,気に入ったものが撮れなかった。
和名は人名に引用されるなど,良い響きを感じる言葉である。一方,実物の花はこのイメージとはかなり懸け離れている。草木染の原料としたのはアカネの根を乾燥させたもので,「赤い根」が由来ともいわれている。
コシオガマ
新たな自生地で
生育する環境から考えれば随所でみられそうだが,路傍でみられるような植物でもない。ツメレンゲの生える場所でよく見かけたが,花はすぐ痛んで落下するなどで被写体に相応しいものが少なかった。たびたび出かける丘陵地に新たな自生を見つけることができた。少々小ぶりな株が多いが花の状態は良い。
生育する環境から考えれば随所でみられそうだが,路傍でみられるような植物でもない。ツメレンゲの生える場所でよく見かけたが,花はすぐ痛んで落下するなどで被写体に相応しいものが少なかった。たびたび出かける丘陵地に新たな自生を見つけることができた。少々小ぶりな株が多いが花の状態は良い。
キクモ
アキノノゲシ [キクの仲間]
いつもと違う秋
茎が人の背丈を越えるほどに伸び,道路沿いや日当たりの良い荒れ地や草地などで普通にみられる。ところが,今年は見かけることが非常に少ない。ここにもコロナ禍が影響していると,勝手な想像をしている。アキノノゲシが生えるような環境には除草作業が毎年入ることが多い。6月中旬までの自粛で,作業時期が例年に比べずれているようだ。刈られる時期が変われば,花をつけない植物もある。
時折訪れる谷津で久しぶりに見かけた。一般的に茎の下部の葉は羽状深列し,上部の葉は広線形で全縁のものが多い。この個体では羽状に深列した葉は全く見られない。葉の幅が細く,羽裂しないものをホソバアキノノゲシ(品種扱い)とする考え方もある。
茎が人の背丈を越えるほどに伸び,道路沿いや日当たりの良い荒れ地や草地などで普通にみられる。ところが,今年は見かけることが非常に少ない。ここにもコロナ禍が影響していると,勝手な想像をしている。アキノノゲシが生えるような環境には除草作業が毎年入ることが多い。6月中旬までの自粛で,作業時期が例年に比べずれているようだ。刈られる時期が変われば,花をつけない植物もある。
時折訪れる谷津で久しぶりに見かけた。一般的に茎の下部の葉は羽状深列し,上部の葉は広線形で全縁のものが多い。この個体では羽状に深列した葉は全く見られない。葉の幅が細く,羽裂しないものをホソバアキノノゲシ(品種扱い)とする考え方もある。
ユウガギク [キクの仲間]
ボントクタデ
ヤナギタデ
ミゾソバ
ウナギツカミ
アキノウナギツカミ?
日本の野生植物(草本Ⅱ離弁花類 1982.3 平凡社)イヌタデ属Persicaria の検索では類似種について,次のように解説している(一部抜粋)。
C. 花は頭状に集まる。
D. 花柄に腺毛がある・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナガバノウナギツカミ
D. 花柄は無毛。
E. 秋に開花し,葉は卵状披針形~長披針形・・・・・・・・・・・アキノウナギツカミ
E. 初夏に開花し,葉は長卵形~広披針形・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウナギツカミ
現在では,アキノウナギツカミとウナギツカミは種内変異として考えられているようだ。
「BG Plants 和名ー学名インデックス」(YList),http://ylist.info に従って,ここでは広義の学名を用いた。
日本の野生植物(草本Ⅱ離弁花類 1982.3 平凡社)イヌタデ属Persicaria の検索では類似種について,次のように解説している(一部抜粋)。
C. 花は頭状に集まる。
D. 花柄に腺毛がある・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナガバノウナギツカミ
D. 花柄は無毛。
E. 秋に開花し,葉は卵状披針形~長披針形・・・・・・・・・・・アキノウナギツカミ
E. 初夏に開花し,葉は長卵形~広披針形・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウナギツカミ
現在では,アキノウナギツカミとウナギツカミは種内変異として考えられているようだ。
「BG Plants 和名ー学名インデックス」(YList),http://ylist.info に従って,ここでは広義の学名を用いた。