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タカクマヒキオコシ

類似種多し
 本変種が紀伊半島南部那智滝周辺に分布していることを把握していた。予想していた場所を30分ほど歩き,シカも入り難い岩場中段にそれらしきものを見つけた。手にとって観察できないので望遠レンズで引き寄せた。貧弱な個体ばかりなので別のものとも思えたが,特徴である葉表面の疎らな毛,萼の上唇及び下唇の違いなどからタカクマヒキオコシと判断した。
 ヤマハッカ属Isodon には似た種が多く,種間においてもそれぞれ自然雑種があるなど,同定には苦慮する仲間である。特に,イヌヤマハッカとミヤマヒキオコシの花の長さや葉形は様々で,多くの変種がある。ヒキオコシヤマハッカを除くと,分布を地域によって分けているので,同定への手がかりとなる。
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ミカエリソウ

多くの人が見返す?
 熊野古道の入口付近に小群生があった。葉は損傷して花はすでに見頃を過ぎていたが,数輪の残り花を選んで撮影した。同属のテンニンソウはシカの忌避植物であるの対して,このミカエリソウには食害が報告されている。「人々が見返す」ことが和名の由来らしい。この日古道を行き交う人々に,この花を見返す人は全くいなかった。
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ナチシダ [シダの仲間]

分布域拡大のシダ
 アジアの熱帯~亜熱帯に広く分布する常緑性のシダを日本最初の発見地で観察した。亜熱帯気候地の希少なシダと思っていたが,現在この地方では随所に生育している。適切な表現ではないが,雑草のごとくといっても過言ではない。大型のシダなので上方からのアングルでは撮り難いが,スギ植林地を通る旧道では幼株を真上から写せる(写真上)。この林下での優占種はナチシダである。聞くところでは,温暖化のうえにシカ忌避植物であることが,分布拡大の主な要因であるという。国指定天然記念物の自生北限地が,見直されることがあるかもしれない。
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アサマリンドウ [リンドウの仲間]

襲速紀要素の植物
 一般的に知られているリンドウ(本州~奄美諸島に分布)の葉は,5対以上,波状縁にならない,柄がない,などの特徴がある。日が当たらないと開花しないのは,アサマリンドウもリンドウと同様であるが,生える環境には違いがあると感じた。日当たりのよい草地に生えるリンドウに対して,半日陰を好むように思う。「アサマ」は最初の発見地,三重県朝熊山(朝熊ヶ岳)に因む。分布は種小名sikokiana のとおり,四国の方が多いと聞く。
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イワヒバ [シダの仲間]

紀伊上臈杜鵑が生える谷で
 乾燥にも強く古くから園芸用に栽培されてきた。根の塊にウチョウランなどを着生させて栽培することもある。秩父地方ではイワマツと呼ばれ,岩場など随所に生えていたが,着生ランとともに園芸目的で取り尽くされた。
 キイジョウロウホトトギスを堪能して車に戻る道沿いで撮影したが,多湿な環境で乾いて葉を巻き込むような個体は皆無だ。見慣れてきた光景なので写すこともなかったが,久々に見る大岩壁の群落に圧倒されて思わずシャッターを切った。自生地保存の観点から掲載する写真はアップのアングルのみにとどめた。
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クルマギク [キクの仲間]

固有種を訪ねる
 地味な本種の知名度はキイジョウロウホトトギスほど高くないと思われる。環境省カテゴリでは絶滅危惧ⅠB類に指定されている希少種で,キイジョウロウホトトギス大群落と同じ岩壁に数株生えていた。この自生地からも個体数が少ないことが想像できる。分布は熊野川流域と図鑑には記述されているが,そのほかの流域にも自生していることが分かった。
 「花茎の根出葉は花時に枯れる」という予備知識があったので,根出葉から花茎が伸びている個体(写真上)に注目して撮影した。帰宅して詳細な画像で確認すると,根出葉は花をつけた花茎のものでないようだ。
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キイジョウロウホトトギス

固有種を訪ねる
 45年前,奈良から南紀へ旅をしたことがある。十津川村から瀞八丁,新宮から海岸線を南紀白浜までのコースと記憶している。特に,中央構造線の一部で谷深い広大な紀伊山地には,奥秩父を思わせる隘路が当時随所で見られた。その頃は,紀伊半島の地質により関心を持っていたが,これがこの植物を知るきっかけとなった。
 自生地の環境は紀伊半島の湿り気の多い崖と聞いていた。崖の代表格が天然記念物「一枚岩」のようである。特異な岩壁の形成は,降水量の多さと地質がその要因といわれている。この地方には火山がないのに温泉があるのは,紀伊半島南部地下深くには未だ冷え切っていないマグマがあるというのだ。調べていくと「熊野カルデラ」という用語が頻繁に取り上げられている。そこでは約1500万~1400万年前に地球環境にも影響を及ぼすほどの大噴火があったという。膨大な噴出物が堆積したが,その多くは雨水によって浸食された。そして残ったものが「古座川弧状岩脈」と呼ばれている。落差日本一の那智滝は,浸食に強い熊野酸性火成岩類・流紋岩と比較的柔らかい熊野層群(堆積岩)の地層の境界に形成された滝である。(南紀熊野ジオパークHP参照)

 ジョウロウホトトギス類は湿り気の多い崖に生え、茎が下垂、黄色の花を下向きにつける。本種を含めて3種1変種があり,いずれも絶滅危惧に指定されている。キイジョウロウホトトギスは、この類の中では最も広範囲かつ多くの個体が自生し,大型で丈夫といわれている。上記岩脈以外の紀伊半島の岩壁にも分布していたが,自生地は激減した。園芸目的の採取,崖の崩落,崩落防止工事などが,その原因とされている。
 紀伊半島南部では石垣などに移植されて保存に努めている地域もある。また,ジョウロウホトトギスとして園芸用に流通している多くは本種と思われる。いずれも,今年の気候の影響で花つきが悪いと聞いた。自然環境が保たれたこの自生地では,そのような状況とは全く無縁で見事な大群落を形成していた。花は想像以上に大きくて,まさに和名に相応しい花である。
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アカネ

空き地の垣根に繁茂
 前回2017-11-28では果期のものを取り上げた。目立たない花の時期を狙っていたところ,散歩途中の路傍に格好の被写体を見つけた。4輪生(正確には偽輪生)の葉と小さな花に着目して撮影した。繁茂した様子をいろいろなアングルで写してみたものの,気に入ったものが撮れなかった。
 和名は人名に引用されるなど,良い響きを感じる言葉である。一方,実物の花はこのイメージとはかなり懸け離れている。草木染の原料としたのはアカネの根を乾燥させたもので,「赤い根」が由来ともいわれている。
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コシオガマ

新たな自生地で
 生育する環境から考えれば随所でみられそうだが,路傍でみられるような植物でもない。ツメレンゲの生える場所でよく見かけたが,花はすぐ痛んで落下するなどで被写体に相応しいものが少なかった。たびたび出かける丘陵地に新たな自生を見つけることができた。少々小ぶりな株が多いが花の状態は良い。
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キクモ

水上葉に開花
 水中葉は何度も見てきたが,花をつけた水上葉は久しぶりである。この休耕田ではコナギミゾカクシも繁茂している。花は小さくて,ぬかるんだ場所に生えるので長靴でも容易に踏み込めない。手持ちの撮影でアングルには苦労する。
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アキノノゲシ [キクの仲間]

いつもと違う秋
 茎が人の背丈を越えるほどに伸び,道路沿いや日当たりの良い荒れ地や草地などで普通にみられる。ところが,今年は見かけることが非常に少ない。ここにもコロナ禍が影響していると,勝手な想像をしている。アキノノゲシが生えるような環境には除草作業が毎年入ることが多い。6月中旬までの自粛で,作業時期が例年に比べずれているようだ。刈られる時期が変われば,花をつけない植物もある。
 時折訪れる谷津で久しぶりに見かけた。
一般的に茎の下部の葉は羽状深列し,上部の葉は広線形で全縁のものが多い。この個体では羽状に深列した葉は全く見られない。葉の幅が細く,羽裂しないものをホソバアキノノゲシ(品種扱い)とする考え方もある。
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ユウガギク [キクの仲間]

秋は何処へ
 接近から南下したUターン台風14号が天候の不順にいっそう拍車をかけている感じがする。スーパーコンピュータをもってしても予測が難しいのだろう。膨大に蓄積した観測データを駆使しても予報が難しいのか。山間部の天気は朝の空模様から判断することがある。
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ボントクタデ

辛みのないタデ
 「ぼんとく」とは「ぽんつく」「ぼんくら」が転じた言葉らしい。食用とするヤナギタデに似ているのに,辛みがないので役に立たない。このことが和名に転じたと思われる。茎や葉脈上の伏毛,葉の黒斑,托葉鞘縁の毛が筒部の半分長,などの特徴があるが,念のため葉を噛んでみた。確かに刺激的な味はない。
 この個体の葉には食べられた痕跡を数箇所に確認した。本来のヤナギタデではないが,まさに「蓼食う虫も好き好き」。

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ヤナギタデ

葉に辛みあり
 「蓼食う虫も好き好き」の蓼は本種といわれて,昔から馴染み深い植物である。芽タデ(現在では栽培されている)を刺身のつまにしたり,鮎の塩焼き用のタデ酢(ヤナギタデの若い葉をみじん切りしてすり潰し,酢でのばしたもの。みじん切りにした後、塩を少々いれると色鮮やかになる。)に用いられてきた。和名は,葉がヤナギの葉に似ることに因る。念のため葉を噛んでヤナギタデと同定した。
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ミゾソバ

谷津は今年もタデまつり
 まもなく秋そばの収穫期を迎える。例年11月には新そばまつりが行われてきた。27回目となるはずの令和2年は,すでに中止が決まっている。
 たびたび訪れる谷津では,いつもと変わらぬ風景が広がっていた。
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ウナギツカミ

アキノウナギツカミ?
 日本の野生植物(草本Ⅱ離弁花類 1982.3 平凡社)イヌタデ属Persicaria の検索では類似種について,次のように解説している(一部抜粋)。
 C. 花は頭状に集まる。
  D. 花柄に腺毛がある・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナガバノウナギツカミ
  D. 花柄は無毛。
   E. 秋に開花し,葉は卵状披針形~長披針形・・・・・・・・・・・アキノウナギツカミ
   E. 初夏に開花し,葉は長卵形~広披針形・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウナギツカミ
 現在では,アキノウナギツカミとウナギツカミは種内変異として考えられているようだ。
 「BG Plants 和名ー学名インデックス」(YList),http://ylist.info  に従って,ここでは広義の学名を用いた。
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ノダケ

谷津周辺が面白い
 丘陵地にも落ち葉の季節が近づいているが,谷津周辺ではまだ数多くの花が見られる。
 いつもなら素通りする植物なのだが,この日は少し気になり証拠写真としてカメラを向けた。茎や花が暗紫色を帯びることが多いが,この個体の茎は緑色,花は白色。シロバナノダケとする考え方もあるが,ここでは無難な同定に留めた。
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ギンリョウソウモドキ

秋らしい気候に
 彼岸過ぎてさわやかな秋晴れの季節がようやく訪れた。2000m級の稜線は薄っすらと色づきはじめた。多雨の影響であろうか,低山ではユウレイタケモドキが大豊作だ。
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