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ホタルカズラ

一年を振り返って⑥ 巡礼古道の一里塚
 昭和30年当初,古老から「大宮郷」という呼び名を聞いたことがある。旧・大宮市(現・さいたま市)のことではない。尋ねると秩父市の古名だと言い,さらに「秩父夜祭」を「大宮の祭」とも称した。まもなく理解できたことであるが,秩父の中心・妙見宮(秩父神社)に因んで古くは神社周辺を大宮郷と呼んだ。門前町というよりは,山間部でありながら交通や交易の要衝であったという。秩父事件のあった明治時代には大宮町,近隣の村々を合併した大正時代には秩父町と変わった。江戸などから多くの人々が秩父札所三十四箇所観音霊場のある「大宮郷」を巡礼した時代があった。今でも残る一里塚からその当時を忍ぶことができる。

 前置きが長くなってしまったが,このホタルカズラの撮影付近にはその一里塚の一つが残っている。「みキハ大ミや」「ひだり志まんぶ」と刻まれているが,現代風に書き換えれば「右は大宮郷」「左は四萬部寺(札所一番)」となる。カザグルマを撮影後,この一里塚に導かれて巡礼古道を歩くと輝くような瑠璃色の花に釘付けになった。すでに2019-05-06に掲載していたのでそのままになっていた。この日に見たカザグルマ,ホタルカズラは2019年の記憶に残る花となった。撮影後,振り向くと古に往来した峠が真正面に見えた。現在では川沿いに舗装道が曲がりくねるが,古道は効率の良い最短距離である。

 令和元年も残りわずかとなりました。多くの方々から拙いブログへ訪問していただきましたことに,感謝申しあげます。皆様におかれましては,穏やかな良いお年をお迎えください。hotarukazura3.jpghotarukazura4.jpg

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カザグルマ

一年を振り返って⑤ 記憶に残る花
 今回と次回に掲載する花は今年見た中で特に印象深いものである。理由は2019-05-22で紹介したとおりである。まだ未使用の写真があったのでこの機会に取り上げた。

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クモイジガバチ [ランの仲間]

一年を振り返って④ 巨木に着生する稀少種
 前回に続き,クロヤツシロランが取り持つ縁で紹介していただいた着生ランである。ミズナラが優占する落葉広葉樹林で,その多くが胸高直径50㎝ほどの大木である。この森の主のように存在感のあるミズナラに着生していた。300mmの望遠レンズで撮影,トリミングを加えたので画像は粗い。
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タンザワサカネラン [ランの仲間]

一年を振り返って③ 菌従属栄養植物その3
 クロヤツシロランが取り持つ縁で貴重種2種を紹介していただいた。撮影してから半年ほど過ぎてしまったが,初見となる貴重種を今回と次回に分け,「一年を振り返って」で取り扱うこととした。
 本種は,2002年に神奈川県丹沢山系で発見され,2008年新種として記載された小型の腐生ランである。その後,数箇所で分布が確認されているが,環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類(EN)に掲載されている。

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キバナノショウキラン [ランの仲間]

一年を振り返って② 菌従属栄養植物その2
 本題に入る前に洪水被害の多かった今年の降水量を調べてみた。
 気象庁データでは,秩父地方の年平均降水量は1333.1㎜と示されている。今年の降水量はこれまでに(12月20日現在)1843.0㎜,10月には818.5㎜も降った。年平均を大幅に上回っているが,過去の記録を見て驚いた。戦後間もない1948年は1868.1㎜,1949年は1840.5㎜,1950年は1887.2㎜。戦後最大の年降水量は1991年の1966.0㎜。観測の方法や精度,雨の降り方などは異なるので単純な比較は拙速であるが,1928年2444.2㎜,1938年2070.6㎜という記録も残っている。一方,観測開始から94年間で年降水量が1000㎜に満たない年が9回もあった。改めて自然の驚異を痛感せざるを得ない。

 キバナノショウキラン2度目の掲載であるが,前回の2019-07-02はおびただしい個体数のため,一つ一つの様子がわかり難かった。1週間後に訪れると少し離れた場所ですっきりとした個体を見つけた。本種がラン科の植物では珍しく液果となることから再び訪れたが,大雨ですっかり流されていた。
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クロヤツシロラン [ランの仲間]

一年を振り返って① 菌従属栄養植物その1
 12月に入っても暖冬傾向であるが,さすがに木々は葉を落としてきた。しばらくは写真整理や来期の花巡りに思いを馳せながら冬ごもりをしたい。

 平成から令和への世変わりの本年は,異常少雨からはじまり,3月から4月にかけて長い寒の戻り,梅雨に入ると極端な日照不足,猛暑後の度重なる台風による激甚災害,まさに今年の干支・己亥を象徴するような年になってしまった。計画していた花巡りはままならなかったが,被害もなく毎日を普通に過ごせることに感謝しなければならない。

 「一年を振り返って」の最初はクロヤツシロラン,4回目の掲載となる。2017年から自生地について調べてきたが,短報の形として報告できそうだ。今年は定規などで大きさが分かるように撮影した。
 写真上は3個体がまとまって生えているところを撮影した。蕾や開花したものだけでなく,伸びはじめた蒴果を後方に配置して撮影した。ピントを花に合わせているので蒴果自体はボケている。
 写真中は言い訳しなければならない。落葉を掻き分けながらクロヤツシロランを探していた時,蕾をつけた個体を誤って掘り出してしまった。すぐに埋め戻すことも考えたが,土壌中の菌類に従属する植物にとってこれ以降の生育は厳しいと思った。撮影後,処置をして腊葉標本にし,博物館に収蔵していただくことになった。塊茎から花茎や根が出ている様子が把握できるが,自然保護の観点から反省しなければならない行為である。
 写真下は花期後から約1月経過,花茎が伸びて蒴果となっている。種子飛散直前のものである。果期の花茎は10㎝に満たないものから,40㎝に達するものもある。
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