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マメダオシ [寄生植物]

同定に混乱が見られる種
 本種に関する知識を持ち合わせていなければ間違いなくアメリカネナシカズラと同定していた。有り難いことに本種に関する貴重な文献を紹介していただいていた。この文献では以下のように衝撃的な記述があった。
 (略) マメダオシとされた標本についての同定はかなり深刻であった。 (略) 全64件のマメダオシの標本データのうち,62点の標本について再同定を行った結果,20点(31.3%)がアメリカネナシカズラを誤認したものであった。その一方で,アメリカネナシカズラと同定されていた標本の中には,ごくわずかだがマメダオシおよびハマネナシカズラを誤認した例が見つかった。 (略) マメダオシの生育環境を「陽光草地,湖畔や河川草地,耕作地,ときに海岸」と修正するのが適当である。(藤井伸二,2018)
 撮影地は藤井氏が指摘したとおりの生育環境であった。正確な同定には実体顕微鏡下での観察が不可欠といわれているが,文献等踏まえながら,重要な部分を意識して接写した。主な寄主植物はアカツメクサ,その他イネ科,タデ科などにも巻き付いていた。

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マメダオシ(ヒルガオ科)Cuscuta australis 豆倒し
 北海道~沖縄に分布,日当たりの良い野原や海岸に生えるつる性の寄生植物。環境省カテゴリーでは絶滅危惧ⅠA類(CR)指定。
 緑葉はなく,はじめ地上に生えるが,寄主に巻きつくと根はなくなる。
 茎は細く糸状で寄主にからみつき,黄色を帯びる。葉は膜質の鱗片葉になっている。

 花期は7-10月。花は無柄で数個が束生する。花冠は長さ約2㎜,5裂する。花冠裂片は萼は扁3角形で薄膜質,鈍頭,長さは花冠の1/2-2/3。萼筒は花冠を緩く取り巻いて花冠との間の隙間が大きく(アメリカネナシカズラでは隙間が狭い。以下の括弧内はアメリカネナシカズラの形質を記す),果実期に花冠裂片は反曲せずにほぼ直立から斜開(反曲)する。花柱は2個独立していて長さ約1㎜,柱頭は頭状でやや膨らむ。
 蒴果はほぼ球形で,径3-4㎜,花冠を基部に残して大きく裸出し,先端はやや凹む。
 ダイズなどに寄生して,害を与えることから`豆倒し’ の名があるが,別にマメ科植物にのみ寄生するわけでない。(2022.9.12)

【参考文献】
藤井伸二,2018,寄主植物を用いたマメダオシ(ヒルガオ科)の生育環境の推定.植物地理・分類研究 66(2):177-184 


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