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ユキグニカンアオイ

ギフチョウのお導きに従う
 訪れた地方にはコシノカンアオイが分布している。その分布域に接して,東側にはユキグニカンアオイとその変種アラカワカンアオイ(主に下越地方荒川流域)の分布が知られ,その境界は新発田・小出構造線といわれている。(前川由己,1988)
 フォッサマグナの西端を糸魚川・静岡構造線とする説は多くの研究者が支持しているが,東端については確定していない。諸説ある中,新発田・小出構造線を東端とする考えがある。
 この日,3年前に訪れたアワガタケスミレの自生地に立ち寄った。すでに見頃は過ぎていたが,1頭のギフチョウが歩く先を舞っていた。その後を追うとこの株に行き着いた。撮影後まもなく下山したが,妖精か,はたまた妖怪か,このギフチョウは見送りまでしてくれた。
 ある程度の予備知識があったので,くびれのない萼筒が鐘形であること,雌蕊が萼筒から多少突出すること,を確認して撮影した。
yukigunikanaoi.jpgyukigunikanaoi2.jpg
ユキグニカンアオイ(ウマノスズクサ科)Asarum ikegamii var. ikegamii 雪国寒葵
 本州の一部(新潟県東部・福島県西部)に分布,低山地の落葉広葉樹林下に生える常緑多年草。根茎は暗紫色,ひも状で匍匐し,葉痕が節くれ立ち,汚白色,ひも状の根を出す。葉は葉柄が暗紫色で長い。葉身は卵形~広卵形~心形で,長さ5-12㎝,幅4-9㎝,鋭頭からやや鋭頭で,深い心形になる。葉の表面は光沢を有した緑色で無毛,葉脈の主要部分が多少凹入する。葉裏は淡緑色で無毛。斑入り個体は未発見である。花は頂生で単生。萼色には3形式がある。花柄は短いかまたは長く,暗紫色の点を散布する。萼筒は浅い盃形~鐘形~鉢形で,長さ5-9㎜,幅4-10㎜。萼筒の内部は濃紫色で,縦脈が9-12本の網状隆起を有する。萼筒喉部は4-8㎜でつば状の環があるが,環は顕著ではない。萼裂片は3角状広卵形,鈍頭,長さ5-11㎜,幅6-12㎜,無毛で平坦である。雄蕊は暗紫色,12本,鈍頭,短柄で,その長さが花柱のほぼ半長である。葯は線状長楕円形,外向し縦裂する。子房中位。雌蕊は暗紫色,6本の花柱に深裂してやや開出,萼筒から多少突出する。花柱は付属突起の先端が多少2岐し,点状の柱頭が外側にある。
 前川文夫(1944)が再分類したカンアオイ節に属する。その根拠となる形質は,1)くびれのない萼筒,2)平坦な萼裂片,3)花柱の形態(先端が2岐,外側に点状の柱頭),などである。
 葉の形質はコシノカンアオイと類似する。両種の葉は,表面が緑色で光沢を有し,葉脈の主要部分が凹入しており,そのため区別しにくい。しかし,両種は花の大きさが明白に異なる。さらに,1)雌蕊が萼筒から多少突出する突出しない。2)萼筒が主に鐘形である筒状球形である。さらに,地理的分布を調べた結果,ユキグニカンアオイは主にフォッサ・マグナ外側の地域に,一方,コシノカンアオイはフォッサ・マグナ内側に分布していることが判った。(2022.4.24)
※ ( )内はコシノカンアオイ
【引用文献】前川由己,1988.新種ユキグニカンアオイについて. 植物研究雑誌 63(2):33-38

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