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ユウシュンラン [ランの仲間]

キンラン属Cephalanthera 1種追加
 ユウシュンランに関するある文献を参考に県内の石灰岩地を25年ぶりに訪れた。骨折した人に伴って,地形図を見ながらゆっくり下山したことがあるので,今でもこのルートは記憶している。当時の明るい樹林地にはスギが植林されて少し様子が変わっていた。希少種なのであまり期待していなかったが,登山道に沿って自生は3箇所,その内1箇所では数10個体を確認することができた。
 落葉樹林の腐植土の厚い斜面に生育するとされているが,腐植土の厚い斜面に生育している個体(写真上・中)もあれば,腐植土が流出した登山道上に生える個体(写真下)もあった。写真上の中央左には露出した白粉のような菌糸がぼんやりと写っている。菌糸が発達するような環境に生える個体は大きく生育していた。これでキンラン属Cephalanthera 5種1品種キンランギンランササバギンランクゲヌマラン,ユウシュンラン,ヤビツギンランを見ることができた。
 種小名subaphylla は,接頭語sub-(=ほとんど)及び aphylla→aphyllus(=無葉の)と解釈することができる。
※ 写真は上から順に上,中,下
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カヤラン [ランの仲間]

湿気の高い谷間で
 2017-05-06に続く掲載となる。前回は古刹の低木に着生していたものだが,今回は沢沿いの大径木のものを写した。湿度が高く樹皮はコケで被われ,生育環境が適しているのか年々個体数は増加傾向だ。このほかにも着生している樹幹を数箇所で見かけた。
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トサノクロムヨウラン [ランの仲間]

開花するクロムヨウラン
 クロツバラ同様,「クロムヨウラン?」2017.12.6から4年が経過した。その記事では「来年(2018年)の夏には花を撮影できるだろう」と結んだが,その後2年間は全く出現せず。諦めかけていた2020年,蒴果を再発見することができた。
 2021年8月,コロナ禍が山峡の秩父地方にも押し寄せてきた。県を跨ぐことや高山に行けるような状況ではなく,井の中の蛙状態。そんな状況下の8月3日,ようやく蕾を発見することができた。まさに「禍転じて福と為す」となった。
 盆行事を除いて出かけることもないので,自宅から10分ほどの自生地を訪れることが日課となった。日に開花するのは1(-2)花,下から上へ順に咲いていくようだ。その日の天気に関わらず開花していた。午前7時前後には既に平開していたことから,早朝から開きはじめると思われる。正午前後から閉じはじめ,時には午前10時過ぎから閉じはじめることもあった。
 「開花するクロムヨウラン」と「開花しないクロムヨウラン」の存在が誤解や混乱を生じていたが,2018年末次健司氏らによって解明された。詳細は神戸大学末次健司研究室を参照していただきたい。

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ヤクシマヒメアリドオシラン [ランの仲間]

唇弁の裂片に注目
 ハクウンラン属Odontochilus は,唇弁の様子で2分するようだ。唇弁舷部の裂片が4角形になるハクウンランに対し,本種の裂片は概ね3角形になる。初産地が屋久島でヒメアリドオシ(アカネ科)の葉に似ることが和名の由来である。別属にヒメアリドオシランがあるので紛らわしい。
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ウチョウラン [ランの仲間]

よくぞ,残れたり
 2017-2-05以来,2度目の掲載となる。自生地は舗装道脇の岩壁で,人の背丈ほどの高さにある。標準レンズを用いた手持ちの撮影,もちろんトリミングなし。花数が多ければ人目につきやすいが,貧弱な個体でわずか2花のために目立たない。いつまでもひっそりと咲き続けてほしいが・・・。
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ノヤマトンボ [ランの仲間]

ランを脅かすハエ食害
 毎年5月頃,近くの丘陵地で花茎を伸ばしはじめたノヤマトンボを見かける。昨年は見事な3株が並んで生えていた。期待して花期に訪れると3本とも花茎が成長せず,葉のみの状態に変わっていた。こうした現象が数年続いているので疑問を懐いていた。識者から「それはハエ(ランミモグリバエ)の影響」と教えていただいた。「野生ラン」と「ハエ」をキーワードにすると,研究論文や新聞記事を検索できる。研究成果で効き目のある農薬もあるが,素人が手にするには少々値が張る。しばらくして別の丘陵地でこの個体を見つけた。花の数は少ないが,食害とは無縁の個体を久しぶりに見たような気がする。
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ハコネラン [ランの仲間]

小型の貴重種
 亜高山帯・針葉樹林下に生えるコイチヨウランに似ているが,垂直分布ではこれよりも低く山地帯・夏緑樹林下に分布する。形態的には唇弁に違いがある。スズタケとともに生えることが多く,これと何らかの関連性をとなえる人もいる。スズタケが消滅した後にハコネランが消えたところもある。フォッサ・マグナ要素植物との考え方もあるが,奈良県の分布には謎が残る。埼玉県ではミズナラが優占する落葉樹林にあり,シコクスミレの葉も点在している。
 ※夏緑樹林=水平方向:冷温帯,垂直方向:山地帯,ブナが極相と考えられるのでブナ帯ともいう。
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シナノショウキラン [ランの仲間]

予想外の鍾馗様
 この日のねらいはシナノショウキランではなかった。ゲートのない林道で目的地まで車で行くことができるが,豊かな林相に惹かれて数㎞手前に駐車した。歩き始めてまもなく,道路脇に見たことのない淡黄色に気づいた。草をかき分けると,それは明らかにシナノショウキラン。多くの方が憧れ,わずかな情報を手掛かりに探し求めると聞いてきた。まず見ることはできない貴重種と思っていた。車で通過すれば気づくことはなかった。このような形で遭遇するとは,運を使い果たすようで恐ろしいくらいだ。それも見事な株である。さらに驚くべきことは,ここは信濃の国ではない。初見の淡黄色は想像以上に美しく,しばし見とれて時の経つのも忘れるほどだった。
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ヒトツボクロ [ランの仲間]

撮影に苦労する植物
 微風でも揺れる細長い花茎,やや薄暗い林床に咲き,アングルも限られるなど,撮影には苦労する。過去に果期や葉だけのものを数回か見てきた。いずれも緩やかな尾根筋の防火帯になるような場所で,アカマツも混生する落葉広葉樹林下に生えていた。危うく見過ごすところであったが,花を着けない特徴的な葉に気づき,導かれるようにこの個体にたどり着いた。
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コアニチドリ [ランの仲間]

昔の記憶を辿って
 20年近く前になるだろうか,この渓谷周辺に訪れたことがある。その頃も水の滴る岩壁にランがあると感じていた。当時はカメラではなく釣竿を片手に渓流を遡行し,もっぱら魚影を追いかけていた。当時とあまり変わらない渓流沿いに,目的の花をすんなり見つけることができた。
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ジガバチソウ [ランの仲間]

久しぶりの大株に満足
 10年以上前,この花をコンパクトデジカメで撮影したことがある。マクロ機能もなく,オートフォーカスで撮るため,写真全てがピンボケ。それ以来の観察となったが,性能が向上したデジタル一眼でストレスなく楽しい撮影ができた。低木の下に生育するため,ここでは限られたアングルになる。地面に這うことも考えたが,自生地を荒らすことになるので止めた。
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ツレサギソウ [ランの仲間]

記念となる日に
 本種は拙ブログでは2度目の掲載となる。久しぶりに良い株に出会い,少々気合いを入れて撮影したものの,やや色被りするなど発色が気に入らない。
 誕生した孫が母子ともに無事退院という知らせが入った。はじめての対面で凛々しい寝顔に安堵する。まさに爺馬鹿である。裏山に咲いているツレサギソウが気になり,家族の目を気にしながら出かけた。白花とは相反する命名となるが,飛翔するサギに「健康で幸多き」を重ねて願った。
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クゲヌマラン [ランの仲間]

ギンランの仲間の違いを実感
 ヤビツギンランを見た時から,その違いを実際に確認したいと思っていた。わずかに残る距,ササバギンランの葉に似た形態など,実際に観察しなければ分からないことである。まさに“論より証拠”である。
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ムカゴソウ [ランの仲間]

極端な天気続く
 梅雨明け後の数日間で7月の総日照時間を超えたという。記録的な雨量後は異常渇水にならないこと切に願うばかりだ。熱中症警戒アラート発令中とのこと,なんだか世の中はアラート流行り。
 相変わらず過去の写真で恐縮するが,猛暑の草原で5年前に撮影したものである。

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タシロラン [ランの仲間]

分布域拡大
 神奈川県や東京都での自生は承知していたが,いずれは埼玉でも見られるだろうと思っていた。意外に早くその時がやってきた。
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マヤラン [ランの仲間]

発見地は神戸・摩耶山
 最新の図鑑では花期及び分布の表記が変わってきている。従来は関東地方南部以西といわれていたが,近年では関東地方北部でも見られるという。菌従属栄養植物の研究が進んでいることも一因であろう。埼玉県でも自生地の拡大及び個体の増加が認められる。ここでは9月にも開花を確認している。個体群の消長が激しく,群落や大きな株でも数年で消えてしまうこともあるという。
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シロバナハクサンチドリ [ランの仲間]

純白のピント合わせに難儀する
 文字通りハクサンチドリの白花タイプで,分類上は品種forma となっている。アルビノ型は比較的よくみられるが,この群生地ではいろいろなタイプがあるので興味深く観察した。わずかに紅紫色が残る個体(写真上・中)と純白の個体(写真下)を選んで撮影した。「純白」のピント合わせはさすがに厳しく,オートフォーカスでは全てピンボケ,マニュアルフォーカスでようやく写すことができた。
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ハクサンチドリ [ランの仲間]

駐車場周辺の芝生に群生
 岩木山麓から8合目に通じる道路では路肩に点々と咲いていた。途中駐車を考えたが,カーブの多い車道を塞ぐので止むを得ず通り過ぎた。ところが8合目にある駐車場の一角では踏み場もないほど群生していた。都市型公園の芝生に群生するネジバナを彷彿させる光景だ。花の色も濃紅紫色から白花(次回に掲載)まで様々,一般に北方型は葉幅が広くなると聞いたことがある。
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ノビネチドリ [ランの仲間]

駐車場の法面に咲く
 下山して靴を履き替えている目前で咲いていた。2018-06-09 で掲載した花と色合いが異なるので取り上げた。側花弁には斑が入り,白地の唇弁には紫色の条が2本ある。本種のアルビノ型,シロバナノビネチドリ f. leucantha との中間型と思われる。花の名山には,駐車場にも魅力的な花がさりげなく咲いていた。
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コケイラン [ランの仲間]

道路脇に群生
 ブナ帯と呼ばれる森林帯で,沢沿いなどの湿った登山道で見かけることが多い。驚くことにここでは県道脇に群生,腐植層が厚く積もり,近くには沢がある。特殊な環境ではないが,本種はこのような場所を好むのだろう。
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キイムヨウラン [ランの仲間]

ムヨウラン類3
 紫色のホクリクムヨウランで驚いたのも束の間,鮮やかな黄色の植物体にこの日2度目のビックリ。まれにしか見られないムヨウラン類の連続遭遇は,神憑り的でやや恐ろしさを感じたほどである。花はホクリクムヨウラン同様あまり開かない。この自生地の株は全て開かず,最後まで斜開することもなかった。暖温帯の常緑広葉樹林床下に生えるというが,当自生地は落葉広葉樹林下にある。本県ではエンシュウムヨウランが近年確認されているため,花色変異品キバナエンシュウムヨウランを疑ってみたが,参考文献等から本品種をキイムヨウランと仮同定した。ムヨウラン類1・2と同様,写真画像を送信して同定をお願いした。
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ホクリクムヨウラン [ランの仲間]

ムヨウラン類2
 ムヨウラン(前回ムヨウラン類1)を撮影後,林の奥に視線を向けると紫色の植物体が見えた。図鑑で見たことがあるだけで,縁遠いものと考えていた。探して見つけたものではなく,まさに遭遇である。こんな場所で見つかるとは,我ながら眼を疑った。
 本種の同定には時間を要した。淡紫色の色が印象的で,直観的に「ホクリク」と思った。しかし,黄褐色が普通のムヨウランには個体変異が大きいこと,そのムヨウランと混生していること,さらに混生している場合には中間的な個体があることなど,調べていくと迷路状態となる。副萼部の膨らみもエンシュウムヨウランにも思えるなど,紛らわしいこと甚だしい。さらに,ここでは全体が鮮やかな黄色の個体(次回ムヨウラン類3で掲載)もある。
 6月上旬は外出自粛ムードもあり,人との会話も遠慮気味。近くの博物館も長い閉館明けで多忙の様子。迷った挙句,国の研究機関にe-mailで問合せをさせていただいた。「一市民の失礼な問合せ」と一蹴されても可笑しくないが,密かに期待を寄せていた。約1週間後にそれが現実のものとなった。結果は私の仮同定のとおりで,ホクリクムヨウランとご指導をいただいた。
 ご多忙の折,ご指導いただきました先生には改めて感謝を申し上げます。
 ※写真は上からA,B,C,D
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ムヨウラン [ランの仲間]

ムヨウラン類1
 緊急事態解除宣言(5月25日)以降も,6月18日までは県をまたぐ移動自粛が求められていた。この間,過去の写真整理や自宅近くの丘陵をじっくり調べていた。その甲斐もあって驚くような成果が得られた。初回は一般的なムヨウラン類からスタート,全3回にわたりその成果を掲載する。

 本種をはじめて見たのは,昨年自宅に近い丘陵地である。菌従属栄養植物なので毎年同じようにはならないが,今年は1/5程度の出現で寂しい限り。植物には特定の環境を好むものがあり,同じような環境をたよりに探していくと別の自生地が見つかることがある。 そのような経験から,昨年の自生地から約1㎞離れた落葉広葉樹林に入った。昨年にも増して,大株のムヨウラン(写真上:高さ34㎝)やきれいに平開した花(写真中・下:高さ28㎝)を撮影することができた。
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ギンラン [ランの仲間]

ヤビツギンランとの比較
 距が明瞭なギンラン,開花して間もない新鮮な花である。この花の残像が消えないまま,ヤビツギンランと遭遇した。前回の5枚目の写真として扱うことも考えたが,あえて別枠とした。この個体との出会いがなければ,ヤビツギンランの発見もなかった。
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ヤビツギンラン [ランの仲間]

距のないギンラン
 緊急事態解除宣言後も特定警戒5都道県に居住するため,過疎地域住民でも6月19日までは自粛に徹すると決めている。花巡りは自ずと近くの丘陵に限られるが,今まで見落としていたものを発見する幸運に恵まれた。約3週間振りの投稿となるが,約1月前に出会った珍種を紹介したい。

 未だに盗掘が絶えないが,コロナ禍で人出が少ないことも影響して今年はギンランの個体数を数多く見かけた。5月上旬,近くの丘陵で数個体のギンランを見かけ,様子が異なることからじっくり観察した。距がないことから,一瞬クゲヌマランかとも思った。撮影したものを帰宅して図鑑で調べるとクゲヌマランの葉や距とは異なる。図鑑では「キンラン同様,稀に唇弁が花弁化した個体 var. oblanceolata N.Pearce & P.J.Cribb がある」と示されていた。
 花弁はほとんど開かないので,ピンセットで静かに開き,花弁化していること(写真D)が分かるように撮影した。その後,二人の方からヤビツギンランやツクバキンランの論文を提供していただき,本種の同定を確信した。
 唇弁が花弁化することをペロリア現象という。約40年振りに岩波の生物学辞典を引くと,次のように示されていた。 

正化(英 pelory,peloria) 語原はギリシア語でお化けの意。唇形花冠などのように相称面の少ない花が,相称面のより多い花(例えば放射相称花)に変化したとき,その花を指し,現象をペロリア化(pelorisation)という。<中略> 花の進化(相称面現象)の先祖帰りと解釈される。重力の影響を去れば生ずるもの(ヒガンバナ)や,栄養の過多によるものもあるが,多くは直接の要因は内部的のものらしく,株による固定的なもの(花弁5個同形となったホシザキユキノシタ),遺伝的のもの(グロキシニアの一変種)もある。100余属に例がある(藤田哲夫,1949)。
※写真は上から順にA~D(写真A,B:2020.5.12 写真C,D:2020.5.10)
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クモイジガバチ [ランの仲間]

一年を振り返って④ 巨木に着生する稀少種
 前回に続き,クロヤツシロランが取り持つ縁で紹介していただいた着生ランである。ミズナラが優占する落葉広葉樹林で,その多くが胸高直径50㎝ほどの大木である。この森の主のように存在感のあるミズナラに着生していた。300mmの望遠レンズで撮影,トリミングを加えたので画像は粗い。
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タンザワサカネラン [ランの仲間]

一年を振り返って③ 菌従属栄養植物その3
 クロヤツシロランが取り持つ縁で貴重種2種を紹介していただいた。撮影してから半年ほど過ぎてしまったが,初見となる貴重種を今回と次回に分け,「一年を振り返って」で取り扱うこととした。
 本種は,2002年に神奈川県丹沢山系で発見され,2008年新種として記載された小型の腐生ランである。その後,数箇所で分布が確認されているが,環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類(EN)に掲載されている。

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キバナノショウキラン [ランの仲間]

一年を振り返って② 菌従属栄養植物その2
 本題に入る前に洪水被害の多かった今年の降水量を調べてみた。
 気象庁データでは,秩父地方の年平均降水量は1333.1㎜と示されている。今年の降水量はこれまでに(12月20日現在)1843.0㎜,10月には818.5㎜も降った。年平均を大幅に上回っているが,過去の記録を見て驚いた。戦後間もない1948年は1868.1㎜,1949年は1840.5㎜,1950年は1887.2㎜。戦後最大の年降水量は1991年の1966.0㎜。観測の方法や精度,雨の降り方などは異なるので単純な比較は拙速であるが,1928年2444.2㎜,1938年2070.6㎜という記録も残っている。一方,観測開始から94年間で年降水量が1000㎜に満たない年が9回もあった。改めて自然の驚異を痛感せざるを得ない。

 キバナノショウキラン2度目の掲載であるが,前回の2019-07-02はおびただしい個体数のため,一つ一つの様子がわかり難かった。1週間後に訪れると少し離れた場所ですっきりとした個体を見つけた。本種がラン科の植物では珍しく液果となることから再び訪れたが,大雨ですっかり流されていた。
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クロヤツシロラン [ランの仲間]

一年を振り返って① 菌従属栄養植物その1
 12月に入っても暖冬傾向であるが,さすがに木々は葉を落としてきた。しばらくは写真整理や来期の花巡りに思いを馳せながら冬ごもりをしたい。

 平成から令和への世変わりの本年は,異常少雨からはじまり,3月から4月にかけて長い寒の戻り,梅雨に入ると極端な日照不足,猛暑後の度重なる台風による激甚災害,まさに今年の干支・己亥を象徴するような年になってしまった。計画していた花巡りはままならなかったが,被害もなく毎日を普通に過ごせることに感謝しなければならない。

 「一年を振り返って」の最初はクロヤツシロラン,4回目の掲載となる。2017年から自生地について調べてきたが,短報の形として報告できそうだ。今年は定規などで大きさが分かるように撮影した。
 写真上は3個体がまとまって生えているところを撮影した。蕾や開花したものだけでなく,伸びはじめた蒴果を後方に配置して撮影した。ピントを花に合わせているので蒴果自体はボケている。
 写真中は言い訳しなければならない。落葉を掻き分けながらクロヤツシロランを探していた時,蕾をつけた個体を誤って掘り出してしまった。すぐに埋め戻すことも考えたが,土壌中の菌類に従属する植物にとってこれ以降の生育は厳しいと思った。撮影後,処置をして腊葉標本にし,博物館に収蔵していただくことになった。塊茎から花茎や根が出ている様子が把握できるが,自然保護の観点から反省しなければならない行為である。
 写真下は花期後から約1月経過,花茎が伸びて蒴果となっている。種子飛散直前のものである。果期の花茎は10㎝に満たないものから,40㎝に達するものもある。
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ツユクサシュスラン [ランの仲間]

2015年宮崎県の花巡り4
 前回のタニワタリノキと同じ渓谷で撮影した。シュスランの一種であることは分かるが,普段見られない遠隔地の植物は図鑑で調べなけれは正確な同定はできないことが多い。
 宮崎市郊外にあるこの渓谷には豊かな植生が広がり,軌道跡のハイキングコース沿いに多様な植物を観察することができた。 
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