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ホクリクムヨウラン [ランの仲間]

ムヨウラン類2
 ムヨウラン(前回ムヨウラン類1)を撮影後,林の奥に視線を向けると紫色の植物体が見えた。図鑑で見たことがあるだけで,縁遠いものと考えていた。探して見つけたものではなく,まさに遭遇である。こんな場所で見つかるとは,我ながら眼を疑った。
 本種の同定には時間を要した。淡紫色の色が印象的で,直観的に「ホクリク」と思った。しかし,黄褐色が普通のムヨウランには個体変異が大きいこと,そのムヨウランと混生していること,さらに混生している場合には中間的な個体があることなど,調べていくと迷路状態となる。副萼部の膨らみもエンシュウムヨウランにも思えるなど,紛らわしいこと甚だしい。さらに,ここでは全体が鮮やかな黄色の個体(次回ムヨウラン類3で掲載)もある。
 6月上旬は外出自粛ムードもあり,人との会話も遠慮気味。近くの博物館も長い閉館明けで多忙の様子。迷った挙句,国の研究機関にe-mailで問合せをさせていただいた。「一市民の失礼な問合せ」と一蹴されても可笑しくないが,密かに期待を寄せていた。約1週間後にそれが現実のものとなった。結果は私の仮同定のとおりで,ホクリクムヨウランとご指導をいただいた。
 ご多忙の折,ご指導いただきました先生には改めて感謝を申し上げます。
 ※写真は上からA,B,C,D
hokurikumuyouran20_1.jpghokurikumuyouran20_2.jpghokurikumuyouran20_3.jpghokurikumuyouran20_4.jpg
ホクリクムヨウラン(ラン科)Lecanorchis hokurikuensis 北陸無葉蘭
 本州(東北以南),四国,九州,沖縄に分布。常緑広葉樹(当自生地では落葉広葉樹)林床下に生える菌従属栄養植物。開花期の高さ20-40㎝(写真の個体は33㎝)。花期は5-6月,花茎の上部に3-8個の花をつける。花は紫色を帯びてやや下垂,ほとんど開かず,まれに1-2個が斜開する。ムヨウランと同じく唇弁の黄色い毛が目立つ。基準産地は富山県。1963年に正宗厳敬によって記載された。和名は発見地に因む。

 ムヨウランには2つの見解(変種,独立種)がある。拙ブログでは植物和名―学名インデックスYListに準じて独立種として表記した。
(写真A,B,C:2020.6.7 写真D:2020.6.9)
【参考文献等】
遊川知久,2015.日本のラン ハンドブックⅠ 低地・低山編.4.p135.,文一総合出版
芹沢俊介,2005.愛知県のムヨウラン類.日本植物分類学会.5(1):33-38.
橋本保,1990.日本産ムヨウラン属の検討.筑波実験植物園研究報告.(9)
米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info

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