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ヒメコザクラ [サクラソウの仲間]

35年越しの念願叶う
 本種の産地を最初に訪れたのは元号が平成となった夏休み。学生時代の恩師と7,8人での山行だった。その時に白花のPrimulaがあることを知った。花期は入梅前後,山開きの頃と聞いた。すでに職に就いていたのでこの季節に訪れることなど無理,当時は登山者も少なく,登山道がロープで制限されることもなかった。
 地球温暖化が危惧される今日,生活圏では多発する豪雨被害が問題であるが,深刻なのは人の住まないような極地に甚大な影響があらわれることと思う。
 “森林帯の寸詰まり現象”のあるこの山は,登山口から約30分弱の標高1300m付近でハイマツ帯となる。岩塊の累積地を登りはじめるとまもなく白いPrimulaが現れた。地元の方は“今年の開花日は5月6日,冬が寒く雪が多かった割には季節の進み具合は異常に早い。どこまで開花が早まるのだろうか。”と嘆きながら語った。標高1500m付近まではすでに花は萎れかけ,1700m付近から瑞々しい花が見られるようになった。まだ5月なのに。

 想像以上に小さなPrimulaだ。絶滅危惧ⅠA類指定にもかかわらず,写真6,7のように随所で観察でき,個体数も多い。若葉には白い粉(写真4),葉は外巻き傾向(写真1,2,4,5)で,終盤の花の葉(写真3)は展開し,葉身の中部以下まで歯牙がある。一方,ヒナザクラの葉は内巻き傾向で上部のみに歯牙がある。
※ 写真は上から1~7
himekozakura.jpghimekozakura2.jpghimekozakura3.jpghimekozakura4.jpghimekozakura5.jpghimekozakura6.jpghimekozakura7.jpg
ヒメコザクラ(サクラソウ科)Primula macrocarpa 姫小桜
 岩手県(早池峰山)に分布,高山の湿った砂地や岩の間に生える小型の多年草。
 根茎は短く5-12個の葉を根生する。葉は広卵形または卵円形,先は短く尖り,下部は急速に狭まって葉柄となり,長さは柄を含めて1-3㎝,幅0.5-1㎝,縁には尖った不揃いの歯牙がある。若葉は白色の粉をつけるが,のちに粉がなくなる。
 花期は5-6月。高さ5-10㎝の花茎を伸ばし1-4個の花を散形につける。花柄は直立し,長さ7-20㎜。苞は線形で基部は膨らまない。萼は筒形で長さ4-6㎜,1/3-1/2ほどの深さに5裂し,裂片は狭卵形でやや尖る。
 白色の花冠は径1㎝,花喉部は黄色,筒部は萼とほぼ同長。蒴果は円柱形で長さ6-8㎜あって萼の約2倍。
 染色体数2n=36。絶滅危惧ⅠA類(CR)。
 和名は草丈や花が極めて小さいことに因る。種小名は“大きい果実の”という意味。(2022.5.30)

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