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スギ [デジタル化]

過去の屋久島31<最終回>
 スギ花粉症の季節になってしまったが,このシリーズを締めくくるにはヤクスギをおいてほかにあげる植物はない。広く分布する植物と思われるが,スギはれっきとした日本の固有種である。
 私にとって3度目となった1984年はY先生ほか3人,計4人での渡島であった。当初の目的が順調に終了し,日程に余裕が生まれた。Y先生は宿で残務整理,1人は海へ,残り2人が山に入る一日となった。山育ちの私は山行を選択,目的は縄文杉。35年前の屋久島には,現在のような縄文杉トレッキングツアーやガイドなどは皆無,整備された登山口や登山口までの公共交通機関なども一切なかった。縄文杉の先にある高塚小屋泊の1泊2日が一般的であった。日帰りはハードと承知していたが,集落のあった小杉谷を多少把握していたので体力にまかせて強行した。この時代に縄文杉に行く者はわずかで,すれ違ったのは数人のみだった。遇った人から「今日はどちらから?」「今日はどちらへ?」の問いかけに,「安房」と答えると驚かれていた。朝6時,安房にある宿「紫水館」を車で出発,荒川登山口から森林軌道(写真6)を約2時間,軌道を過ぎて大株歩道の急登,縄文杉に着いた時には正午を回っていた。昼食も歩きながら摂るなどで時間を稼ぎ,宿に戻ったのは夕刻7時だった。荒川登山口から縄文杉の往復距離は20㎞を越えた。女将さんのご厚意がなければ実現できなかったことである。定宿「紫水館」には大変お世話になったこと,改めて感謝を申し上げたい。
 縄文杉(写真1)を抱えているのは筆者であるが,現在ではこのような撮影は不可能である。世界遺産登録以降,縄文杉を訪れる人は激増して年間9万人,日に800人以上が訪れたこともあったという。多くの登山者に根元の周囲を踏まれて土壌が流失,そのため根が露出するなど深刻な状況が顕著になった。現在では展望用デッキや登山道の木道化などが施されているようだ。自然には復元力はあるが,限度を超えると再生不能となる。2011年に世界自然遺産登録された小笠原諸島でも,同じようにオーバーユースが大きな課題となっている。
 この日,ウイルソン株から縄文杉で遇った人は皆無,まさに神域そのものであった。
joumonsugi.jpguirusonkabu.jpgmeotosugi.jpgdaiousugi.jpgsandaisugi.jpgtorokko.jpg
スギ(ヒノキ科)Cryptomeria japonica
 本州・四国・九州(屋久島まで)に分布,常緑針葉樹で日本固有種。高さ50m,直径2mに達する常緑高木で,樹形は円錐形。山地の沢沿いに多いが,岩上や湿原の周辺などにも生育する。建築材として重要な樹種の一つで,山地に生育するほとんどが人工的に植栽されたものである。従来の分類体系ではスギ科として独立していた。 

※写真は上から1~6(いずれも1984.8.12)
写真1:縄文杉
写真2:ウイルソン株
写真3:夫婦杉
写真4:大王杉
写真5:三代杉
写真6:安房森林軌道・小杉谷橋

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