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ヘゴ [デジタル化]

過去の屋久島21
 関東地方に分布するシダは基本的には草本であり,茎は匍匐するもの,あるいは短く立ち上がるものがほとんどである。ところが亜熱帯から熱帯には,木生シダという樹木と同じように高く生長するものがある。ヘゴをはじめて見た時には「南国の密林に来た」ことを実感し,とても感動したことを今でも鮮明に覚えている。
 デジタル化するために当時のポジフィルムを確認すると,見るに耐えないような写真ばかりだ。見上げるようなアングル,標準マクロレンズでは収まらない巨大な個体など,ほとんどが満足のいく写真ではない。紹介できるような唯一の写真が下記のもので,ヘゴとともに左下には過去に使われていた森林鉄道「安房森林軌道」の枕木が写っている。小杉谷に掛かる軌道の橋を利用し,やや見下ろすようなアングルで撮影した。

hego.jpg
ヘゴ(ヘゴ科)Cyathea spinulosa
 伊豆諸島(八丈島)・本州(三重県)・九州(本土中南部,五島列島,天草諸島,甑島列島,種子島,屋久島,口之永良部島,奄美大島,沖永良部島)・沖縄(沖縄本島,八重山諸島,西表島)・小笠原諸島(父島,母島,北硫黄島)に分布,南方ほど多く,低山~雲霧帯よりも高所の林中や林縁に生え,渓流沿いや谷の底部に多い。分布の北限に近い個体は木生シダにならないものが多い。
 幹は不定根で密に被われ,高さ4mを越すものの多く,大型の葉を幹の先端部に輪状に互生する。幹の基部の太さは40-50㎝になるものもかなりある。
 園芸に用いるヘゴ板は多数の不定根が絡み合った樹幹を板状に加工したもので,保水性が高いため多様な植物の栽培に広く用いられる。そのため,必要以上に乱獲された結果,個体数が激減したり絶滅した地域もある。写真のような成熟した木生シダに生長するには長い時間と広大な空間が必要である。
(1984.8.9)

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