ヤマタバコ

45年前が蘇る
　職に就いて2，3年後，友人に誘われてこの地方を訪れた。湿地の植物が目的だった。“広大な湿地帯がある”と友人は地理院の地図で示した。確かに地図上には広範囲に湿地記号が表記されていた。期待して現地を訪れると湿地らしい場所は全くない。あるのは整備された広大なゴルフ場だ。2人で落胆した厳しい残暑の在りし日が蘇った。友人は10年前に他界した。
　開発前はこのような風景があちこちで普通に見られたことだろう。古希を過ぎて希少種に出会えたことに感謝。

ヤマタバコ（キク科）Ligularia angusta 山煙草　別名 シカナ
　本州（関東地方，中部地方）に分布，温帯山地の草原に生えるやや希な多年草。絶滅危惧ⅠA類(CR)
　茎は叢生し，細長く，長さ1-1.3mで毛はなく，普通分枝しない。
　根出葉は両面緑白色で直立し，葉柄は長さ15-35㎝，上部は翼があり，葉は卵状長楕円形で長さ17-30㎝，幅13-19㎝，円頭，基部は切形で葉柄に楔形に移行する。葉縁は波状で，不揃いに微凸歯を散生する。
　茎葉は普通3個，直立し，下部の葉は長楕円形で円頭，基部は広く茎を抱き，やや鞘状になる。
　花期は5-6月。花序は長さ約30㎝で下部から開花する。頭花は花時横を向き，柄は長さ5-10㎜，中央に小さい苞がある。総苞は長さ6-8㎜，幅3-3.5㎜，緑白色，上部は黒色を帯びる。総苞片は合生して筒となる。舌状花は3まれに4-5個，長さ17㎜。(2022.6.16)