クモイコザクラ

季節を奏でる草花９（一年を振り返って）
　サクラソウの仲間を3種取り上げたい。ここでは、主にプリムラ（サクラソウ属Primula）を「仲間」として扱う。埼玉県ではサクラソウ属の2種が国の天然記念物に指定されている。一つは、さいたま市田島ヶ原サクラソウ自生地（国の特別天然記念物）、もう一つはチチブイワザクラが生育する武甲山石灰岩地特殊植物群落（国の天然記念物）。サクラソウは県の花、チチブイワザクラは町の花（横瀬町）で認知度も高い。鉱区で立入禁止のチチブイワザクラ自生地が、身近で遠い存在なので近縁の種には関心を寄せてきた。

クモイコザクラ（サクラソウ科）Primula reinii var. kitadakensis 雲居小桜
　コイワザクラの変種で、紅紫色の花の径は約2㎝、葉の切れ込みがより深いことが特徴。秩父山地、南アルプス、八ヶ岳に分布する「フォッサマグナ要素の植物」という考え方があるが、それらの植物と分布が重なるところが多い。深山の湿った岩場に生えているが、人の手の届くところには個体数は少ない。地域により異なるが、環境省カテゴリーでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。(2016.5.21)