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カンアオイ

歩みの遅い植物
 若い時に「日本の植物区系」(前川文夫著)という本を読んだ。本の構成は日本の地形,日本の地史,日本の気候帯によるフロラ,地方的フロラ,という4部からなる。「地球の窓」「日本地質学発祥の地」と呼ばれる地で生まれたことから興味深く読んだ。「Ⅱ 日本列島の地史とフロラの変遷」は,カントウカンアオイの分布と10万年前の陸地との関係からはじまる。カンアオイの分布速度が極めて遅いことから,古地史と分布とを比較研究することができる,と解説されていた。
 埼玉県南西部の丘陵には,このカンアオイが分布している。帰宅後,久しぶりに懐かしい本の一節を読み直した。花は無弁花で厚質な萼なので,最後まで形を変えることは少ない。種子は発散することなく,ほぼ同じ場所に落ち着くと思われる。
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カンアオイ(ウマノスズクサ科)Asarum nipponicum var. nipponicum 寒葵 別名 カントウカンアオイ
 千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県・静岡県に分布,山地の林下に生える多年草。茎は地を匍い,多肉多節で暗紫色,芳香がある。葉は卵形,卵状楕円形,ときに卵状ほこ形で,長さ6-10㎝,幅4-7㎝,鋭頭,基部は深い心形,表面は平坦で濃緑色,白斑があり,疎らに毛がある。裏面は無毛。柄は長く暗紫色を帯びる。花期は10-2月,暗紫色で径約2㎝,萼筒は筒状鐘形で長さ1㎝内外,内面に9-12本の縦の隆起線があり,格子状になる。萼筒の上部はくびれず,萼裂片は開出して,卵状3角形で萼筒よりやや短く,汚黄色で紫斑点がある。雄蕊は12個。花柱は6個,棍棒状で先は2裂し,その基部外側に点状の柱頭がある。(2021.3.5)

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