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ウスバサイシン

地表すれすれに咲く奇妙な花
 カンアオイの分布速度には「1万年たってやっと1㎞前進」という説がある。40年以上前に読んだ前川文夫著「日本の植物区系」(40ページ)で知ったことである。落ち葉に埋もれて咲き、成長も遅いことから分布が広がりにくいようだ。そのため、地域によって種分化が起こり、多くの種や変種が報告されている。特に、カンアオイ節は49種13変種もあり、手を出す気になれない。その点、同じカンアオイ属Asarum でもフタバアオイの仲間やウスバサイシンの仲間では種の数はずっと少ない。
 少し前になるが、咲きはじめたウスバサイシンに出会い、思わずシャッターを切った。同定に迷い、今日まで掲載を引き延ばしてきた。落ち葉の状態が不自然なのは、おそらく誰かが花を見るために除去したためであろう。 
usubasaishin.jpg
ウスバサイシン(ウマノスズクサ科)Asarum sieboldii 薄葉細辛
 本州~九州北部に分布、山地の林下の湿ったところにはえる多年草。横に匍う茎の先から2個の葉を出し、3-4月に2葉柄の間に1個の花をつける。花は径1-1.5㎝。常用の図鑑では3種が掲載されているが、1997年記載1種(アソサイシン)、2007年記載3種(トウゴクサイシン、イズモサイシン、ミクニサイシン)を加えて、今日では7種に分類されている。関東地方ではウスバサイシン、トウゴクサイシン、ミクニサイシンの分布が一部で重なる。今回は少ない情報と私自身の知識不足により、2007年以前の古い考え方で同定した(2018.4.4)
【参考文献等】
前川文夫(1977),「日本の植物区系」玉川大学出版部
佐竹義輔他 編(1982), 「日本の野生植物 草本Ⅱ離弁花類」 平凡社
山路弘樹、中村輝子ら(2007),「日本産カンアオイ属ウスバサイシン節の分類学的研究」『植物研究雑誌』Vol.82
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info 

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