照葉樹林の構成種2
 本種は埼玉県では貴重な群落を形成することがある。特に県西南部の山地には大径木の本種を優占種とする群落(写真C)があり,天然記念物に指定されている。植生はチャート質の急傾斜地に成立し,ウラジロガシの他,ツクバネガシ,ヤブツバキ,ヒサカキ,アオキなどで構成されている。幹回り3m前後の大径木(写真C・D)の樹冠は欠損しているが,落雷または暴風によるものと想像した。急斜面には古い倒木も見られた。内陸でありながら房総半島や伊豆半島の暖帯照葉樹林を思わせる。この群落からわずか数㎞離れた標高約800mに冷温帯のブナが分布することも興味深い。このような植生が見られる場所は,県西南部の山地で東から南東方向に開けた渓谷に限られる。
 尾状に伸びる葉先や斜上気味の鋸歯と波立つような葉縁(写真B),薄い革質の葉質などで
シラカシと区別できる。本種(写真A)の果実は翌年の秋に熟す。
 ※ 写真は上から順にA~D