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ツチトリモチ [寄生植物]

葉緑素をもたない寄生植物
 落葉広葉樹の広がる標高約1000mの山中で歪な形をした塊を見たことがある。栽培されているコンニャクイモが変形したようなもので,ミヤマツチトリモチの塊茎であると教えていただいた。ハイノキ属に寄生するツチトリモチの存在もこの時に知り,この奇妙な植物に興味を持っていた。
 雌雄異株で雌株のみが知られ,信じ難いが単為生殖で種子はつくられるという。球形~長楕円体の肉穂状の花序表面にある無数の赤い粒は,花でも果実でもなく小棍体と呼んでいるようだ。花に相当するものは内部にある。ツチトリモチを踏みつけないように自生地を歩いていると,ちょうど頂部が欠損している株(写真下)を見つけた。帰宅後画像を拡大して確認すると,鮮紅色層と橙黄色層の境目付近に雌花があるようだ。雌花は1花序に数え切れないほどあることになる。
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ツチトリモチ(ツチトリモチ科)Balanophora japonica 土鳥黐
 本州(三重県・和歌山県,広島県のものは人為的にもち込まれたともいわれる)・四国・九州(屋久島も含む)及び台湾に分布する。暖地の自然林中に生ずる多年草。雌雄異株で,雄株は発見されていない。高さは6-12㎝位。塊茎は大小不同に分岐するものが多い。一度花茎を生じた塊茎支(塊茎がこぶ状に分岐したもの)は再び花茎を生じないで腐るが,その脇に新しい塊茎支を生じ,それから新しい花茎が出る。塊茎の表面には星状の皮目が散生する。花茎は1個の塊茎より1-5個生じ,頂端に花序をつける。鱗片葉は花茎を取り巻いて普通8-12個らせん状につき,しばしば肌色,あるいは橙黄色~橙赤色,スプーン形で内側がくぼんでいる。花序は卵状長楕円体で,鮮紅色。表面を被う小棍体は太い棍棒状でクチクラ(表皮を被う疎水性の層)の一部に低い網目状隆起があり,間には無数の雌花が埋もれていて,外部からは見えない。花の盛期になると花柱が長く伸びて小棍体の間から淡黄色で小頭状の柱頭が現れ,毛状に見える。花期は10-11月。単為生殖により結実する。ハイノキ属の根に寄生するが,クロキに最も多く寄生し,場所によってはシロバイ,ハイノキなどにも寄生する。 (2020.11.19)

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